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英国の居酒屋“パブ”のお話 [エッセイ]

No.4724 (2014年11月08日発行) P.68

中田一郎 (白十字総合病院外科)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-17

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  • 初めての外国を訪問する時、まずガイドブックを見るだろう。私は、訪問国と日本との時差、訪れる時の気候、最高気温と最低気温、飛行時間、空港からホテルまでの距離などをチェックし、有名な訪れたい所、例えばロンドンでは、バッキンガムパレス、セント・ジェームズ宮殿、ビッグ・ベン(最近の呼び名はエリザベス・タワー)、国会議事堂、大英博物館、ナショナルギャラリー、ウエストミンスター寺院、セント・ポール寺院、ロンドンズー、マーブル・アーチ、ハイド・パークなどをチェックする。その案内の中にロンドンでは有名なパブ(パブリックハウス) も記されている。たとえばロンドンシティにある“ザ・ハンドアンドシアーズ(写真)”は19世紀初頭に設立され、歴史的な内装を持つパブとしてリストアップされている。そこには特徴的な中心バー、小さな個室、2階部屋、また冬の夜のための地下室などがある。

    英国人にとってのパブとは、古くには労働者が工場での辛い仕事から逃れ、しばし安らぎを得る数少ない場所、そして男たちが共同体の一員として生きるために行かねばならない場所とされていたという。しかし現在のパブの最も大きな存在理由は、民衆娯楽の場であるとも言ってよいであろう。

    英国にはパブがとにかく多い。どの街角にも、どんな小さな村にも1軒はパブがある。そしてパブの所在は、様々な絵と屋号などが描かれたパブの看板ですぐにわかる。これらは英国の街の特徴になっている。

    まずパブの看板について述べよう。その起源は大変古いようである。描かれている絵は人物像が多いが、果樹、家、楽器、鳥、船着き場であったりする。見ていると面白くいろいろな想像を掻き立てられる。そしてパブの名前は、歴史上の著名な人物名、地区の伝統的な活動などに由来するともいう。また、醸造所の名前が添えられているものもある。それはその店がその醸造所の特約店であることを示している。一方、特約に縛られずに自由に様々な醸造所のビールを売る店、すなわちフリーハウスであると謳っている看板もある。いずれにしてもパブのおやじに看板の由来や意味を聞くのもパブ探訪の楽しみであろうが、ロンドンの下町ではコックニー英語で語られ、もし説明を受けてもほとんど理解しがたい。

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