時は2月、日曜日の朝、天気晴朗なれども風強し。電線を鳴らす風音がいかにも冷たそうで、布団から抜け出す気にはなれません。暦の上では春というのに、まだまだ加湿器と暖房器具は必需品。しかも寝ているのは北側の隅、出窓が1つあるだけの昼間でも電灯がなければ暗い部屋なのです。
テレビをつけると、画面いっぱいに映し出されたのは関東の大雪。立ち往生した車、雪の重みで屋根が潰れた体育館。立春どころか雛の節句も近いというのに、この寒さ。
幸い今日は日曜日、仕事もなければ用もない。ぐうたらこそ極楽と決め込み、「春眠暁を覚えず。眠いのも仕方がないね」と寝坊の言い訳をしてしまうのです。
暖房をつけていない部屋は冬のよう。されど布団の中は自分の体温で暖まっているので春みたい。勝手なことだと我ながら呆れて瞼を閉じた瞬間、ぱっと何かが弾けました。
「春?春ってなんだろう」
疑問を解くには書物を引け。まずは定番の『広辞苑』から。「春」とは、「草木の芽が『張る』意、また田畑を『墾(は)る』意、気候の『晴る』意からとも。四季の最初の季節、日本・中国では立春から立夏の前日まで、陰暦では1~3月、気象学的には太陽暦の3~5月、天文学的には春分から夏至の前日までに当たる」。
ちなみに、今年の「立春」は2月4日、冬籠りの虫が這い出ることを意味する「啓蟄」は3月6日、「立夏」は5月6日。確かに私が暮らしている熊本では2月ともなれば梅が咲き始め、春の訪れを感じなくもないのですが、3月初旬までは雪がちらつくこともあり、コートは手放せません。「立夏」といっても5月初めの北海道は桜の見頃で、夏というより春の初めでしょう。日本列島はタツノオトシゴのように細長く、沖縄と北海道では気候風土が異なるし、自然は人間の思惑通りにはいきません。どうやら新暦(太陽暦)が定めた春にはいささか無理があるようです。
旧暦(太陰太陽暦)ではどうでしょう?
旧暦の2月4日(立春)は新暦では3月23日、立夏にあたる5月6日は6月21日。ほぼ1カ月半ずれていて、これならばまあ納得できる範囲です。
暦は日読み。1日を単位として、1年を月、日、曜日などで分割したもの。この時代の地球でしか通用せず、暦を定めるのは権力者の特権。現在の日本が採用しているのはグレゴリオ暦だけど、イスラム暦を採用している国もあるようだし、キリストの誕生を元年とする西暦もあります。だけど、根拠となるとはなはだ怪しい。人為的に作られた暦と体感が異なるのは当たり前のことなのです。
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