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膵囊胞[私の治療]

No.5018 (2020年06月27日発行) P.40

原 和生 (愛知県がんセンター消化器内科部長)

登録日: 2020-06-26

最終更新日: 2020-06-24

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  • 膵囊胞は,膵内に発生した囊胞すべてを示す病名であり,その病態が考慮されている言葉ではない。しかし,膵囊胞が発生するような膵臓は,そもそも腫瘍が発生しやすいとの臨床データをもとに,膵囊胞は通常型膵癌の高リスクとされている。膵囊胞患者の1~5%程度に通常型膵管癌が発生するとされ,健常人の20倍以上のリスクとも言われている。現状では,たとえ小囊胞であっても通常型膵癌の高リスクとして経過観察が推奨されている。膵囊胞の中には,先天性膵囊胞,腫瘍性膵囊胞,固形腫瘍の囊胞変性,貯留囊胞,膵炎後の仮性膵囊胞など,鑑別すべき多くの囊胞が含まれている。一口に膵囊胞といっても,悪性の膵囊胞性疾患から非腫瘍性膵囊胞までもが含まれることに留意すべきである。

    ▶診断のポイント

    まずは,腫瘍性膵囊胞と非腫瘍性膵囊胞の鑑別が必要になる。臨床で遭遇する頻度が高い非腫瘍性膵囊胞は,慢性膵炎など炎症性疾患に伴う貯留囊胞や急性膵炎後の仮性膵囊胞などである。時には通常型膵癌による貯留囊胞(貯留囊胞自体は良性)が増大し,通常型膵癌そのものは小さくても,大きくなった貯留囊胞をきっかけに,通常型膵癌が発見できる場合もある。

    同様に,頻度が高い腫瘍性膵囊胞は膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm:IPMN)である。典型的なIPMNは膵管内に乳頭状腫瘍が増生し,粘液の排出を認めるため診断は比較的容易である。しかし,非典型例が少なからず存在し,診断に難渋することも多いため,膵囊胞と侮らずに専門医を受診することをお勧めする。

    膵囊胞の精密検査は,CT,MRI,EUS(超音波内視鏡)などを用いて確定診断を行う。しかし,CTやMRIでは小病変の指摘や囊胞内の詳細な観察が困難な場合があるため,EUSを用いて質的診断を行うことが望ましい。EUSを用いれば小病変であっても検出可能であるが,術者の経験に依存する部分が大きいのが欠点である。

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