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遺伝子診断への期待と懸念 [プラタナス]

No.4732 (2015年01月03日発行) P.3

小㟢健次郎 (慶應義塾大学医学部・病院 臨床遺伝学センター教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-14

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  • 慶應義塾大学医学部・病院 臨床遺伝学センター教授 小㟢健次郎(こさき けんじろう)

    1989年慶大卒。93年米カリフォルニア大(UCSD)臨床遺伝学クリニカルフェロー、慶大小児科准教授を経て、2011年より現職。米臨床遺伝専門医。日本小児遺伝学会理事長。

    大量の遺伝子配列を安価かつ高速で決定する次世代シーケンサー技術が発展し、臨床応用が期待される。筆者の施設では、診断不明のいわゆる稀少難病患者に対して、全遺伝子を網羅的に検査する遺伝子診断を提供している。現在、原因が判明する症例は3割程度に限られるものの、確定診断によって合併症の回避や正確な遺伝カウンセリング、新たな治療法の検討に繋げることが可能である。

    遺伝子診断技術の発展については、一般の関心も高い。世論調査によれば、「遺伝子診断を受けたい」と答えた人の割合は52%であった。その背景には、ハリウッド女優による遺伝子診断結果に基づく予防的な乳房切除や、医師を介さない遺伝子多型解析による体質判定サービスの一般への提供開始の報道があると思われる。

    何より、「遺伝子」という言葉には決定論的な響きがある。単一の遺伝子の変異が唯一の発症原因となっている、いわゆるメンデル遺伝病では、遺伝子変異の有無によって発症が大きく左右される。これは、中等教育で「エンドウ豆の法則」として教えられる通りである。一方、生活習慣病など、多数の遺伝子と環境要因が関与する多因子遺伝病については、特定の遺伝子の変異が疾患発症に寄与する程度は相対的に小さい。

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