医師になるまでに医学生はどのようなことを学ぶのか。一人の医師として、一人の経営者として、一人の日本人として、今何を学ばなければならないかを私は日々考えている。
顧みると、私が医師になるまでに受けた教育内容のほとんどは医学知識であった。医師として働き始めたとき、大学で学んだ医学と実際行われている医療の違いを感じた。そして、医師としての経験を積めば積むほど、医師が提供するのは「医学」ではなく、「医療」であることを痛感した。
医学は学問であり、医療は医学を実学に変換したものである。さらに、社会を構成する基盤の一部である。医師は、大学で得た医学的知識を医療として患者に提供しなければならない。つまり、医学を実学に変換する作業が必要になるのである。
実学に変換する作業とは、対患者に関して言えば、家族・仕事・趣味・嗜好・成育歴など患者を取り巻く環境、生きてきた軌跡などを見ながら患者が求めている医療を提供することである。また医療という大枠で見た場合には、医療が社会においてどのような位置づけにあるのか、医療という制度がどのように成り立っているのか、そして時代の流れという時間軸の中で医療に何が求められ、どのように変わっていこうとしているのかなどを総合的にとらえて医療を提供することである。
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