わが国は公平な社会だと考えられているが、領域によっては医療における格差は明らかであり、人口構成や社会構造の変化とともに拡がりを見せている。たとえば、救急要請から救急医療機関への収容までに要した平均時間を見ると、最短の福岡県(29.4分)と最長の東京都(54.9分)では2倍近くの開きを認める(「2014年版 救急・救助の現況」消防庁)。
もちろん格差を完全になくすことは困難であるが、それでも守るべき医療提供体制について、しっかりと客観的指標で吟味しながら、地域医療を計画的に設計していくことが求められている。
労働人口も経済規模も縮小していく中で、医療の持続可能性を高めるには、限りある地域の社会資源を効率的かつ効果的に活用していくしかない。つまり、「ニーズに見合ったサービスを切れ目なく、効率的に提供するにはどうしたらよいか」という観点から再検討していく必要があり、これが2015年度から都道府県が策定することになっている「地域医療構想(ビジョン)」の基本的考え方となる。
この構想の策定に当たっては、地域の医療に関わる情報を可視化するべく、様々なデータ分析に基づいてシステムの検討を進めることが重要である。診断群分類(DPC)やレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)のような詳細な医療データセットが社会インフラとして制度化されている国は、国際的に見ても日本だけであるが、さらに2014年度からは「病床機能報告制度」が加わった。
これらは、単に現状を把握し、未来を予測するということではない。改革に医療従事者や住民を巻き込んでゆくため、根拠を持った説明資料となるだろう。
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