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【識者の眼】「ピルで生理を移動して受験や旅行を快適に過ごそう〜実践編〜」柴田綾子

No.5029 (2020年09月12日発行) P.64

柴田綾子 (淀川キリスト教病院産婦人科副医長)

登録日: 2020-09-02

最終更新日: 2020-09-02

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秋から冬にかけては月経移動の需要が増えてくるシーズンです。低用量ピルや月経移動のピル処方には事前の内診は不要であり、産婦人科医以外でも処方可能です。今回は、月経移動の実践テクニックをご紹介します。

1. 月経移動の問診と説明

①最終月経日(前回の月経が始まった日)、②月経周期、③月経を移動させたい日─の3点は必ず問診が必要です。もし最終月経が1カ月以上前だったり、月経周期がばらばらな場合は要注意です。妊娠の可能性がある場合は、妊娠検査を提案します(医療施設では自費で2000円前後、薬局では600円前後で購入可)。月経移動の理由は、旅行、受験、部活の大会、アスリートのコンディション調整などさまざまですが、低用量/中用量ピル(エストロゲン・プロゲスチン配合薬)には血栓のリスクがあるため、長時間の飛行機旅行・喫煙者(特に1日15本以上)・手術前4週間と術後2週間以内は注意が必要です。月経移動は自費であり施設ごとに値段を設定します。ピルの副作用である嘔気や不正出血は、低用量より中用量ピルの方が頻度が多くなります。移動したい月経の1カ月以上前に来院していれば、月経を早める方をお勧めします。月経を遅らせる場合、大事なイベント中にピルの内服が必要で副作用が心配なためです。ピルは血中ホルモン値を維持するため、なるべく同時刻に服用するよう説明します。

2. 月経を早める場合

1つ前の月経開始3〜5日目から中用量ピル(プラノバール)や黄体ホルモン(ノアルテン)を10日間または1相性の低用量ピルを14日間内服します(1日1回1錠)。内服終了から2〜5日後に消退出血(月経)がきます。ノアルテンは黄体ホルモンで血栓リスクがありません。

処方例① プラノバール配合錠/ノアルテン  1日1回1錠 10日分

処方例② マーベロン/ファボワールⓇ     1日1回1錠 14日分

*低用量ピルは1シート毎の処方のこともあり、その場合は21日分となる

3. 月経を遅らせる場合

月経移動させたいときまでに日数が少ないときはこちらになります。月経予定日5〜7日前から中用量ピル(プラノバール)や黄体ホルモン(ノアルテン)を飲み始めて、大事なイベントが終わったら内服を終了します(1日1回1錠)。

処方例:プラノバール配合錠/ノアルテン  1日1回1錠 ◯日分

*月経予定日5〜7日前から大事なイベントが終わる日までの日数を処方する

【参考】

▶日本プライマリ・ケア連合学会 女性医療・保健委員会 [http://www.pcog.jp/topics_I-detail.php?tid=25]

柴田綾子(淀川キリスト教病院産婦人科副医長)[月経移動]

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