筋ジストロフィーとは,「筋線維の変性・壊死を主病変とし,進行性の筋力低下をみる遺伝性疾患」の総称で,ジストロフィノパチー(デュシェンヌ型,ベッカー型),先天性,肢帯型,顔面肩甲上腕型,筋強直性,エメリー・ドレフュス型,眼咽頭型等の病型が含まれる。ただし,筋強直性は別稿(「筋強直症候群」)で扱われているため,本稿では触れない。
発症年齢・臨床経過,遺伝形式,罹患筋分布,合併症・併存症,血液・画像・電気生理検査等を組み合わせて鑑別を行うが,臨床所見だけで確定診断を下すことは難しい。筋ジストロフィーと類似した治療可能な疾患があること,筋ジストロフィーでも新規治療の開発が進みつつあることから,正確な診断の重要性は高くなっており,遺伝学的検索や筋生検(一般病理,免疫学的検索)を適宜考慮する。ただし,遺伝学的検索においては十分なカウンセリングと同意が必須である。厚生労働省研究班による「筋ジストロフィーの病型診断を進めるための手引き」[https://doctors.mdcst.jp/diagnosis/]も参照されたい。
ステロイドがジストロフィノパチーに保険適用となっているが,現時点で筋ジストロフィーに対する根本的な治療薬はない。このため,疾患によって生じる多様な医療課題に対して,前方視的かつ集学的に介入することで機能および生活レベルの維持,二次性障害(拘縮・変形,誤嚥性肺炎等)の予防,合併症のコントロールを図ることが重要である。
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