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【私の一曲】『ラ・ボエーム:この冷たい手を』

No.4733 (2015年01月10日発行) P.74

原田康夫 (広島大学名誉教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-14

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  • ジャコモ・プッチーニ(1858〜1924年)作曲のオペラ『ラ・ボエーム』は、最もよく上演されるイタリアオペラの1つ。初演は1896年。第1幕で歌われるのが『この冷たい手を』と『私の名はミミ』の2つのアリア。
    〔写真は筆者提供〕

    私の人生を決めた1枚のレコード

    終戦の年の暮れ、原爆の焼け跡の闇市でビクター赤盤のレコード2枚を手に入れた。1枚はユッシ・ビョルリングが歌う『ラ・ボエーム』のアリア『この冷たい手を』であった。聴いた途端に背筋に電流が走ったようになり、「わしはオペラをやるんじゃ」と言い出したのが中学2年の時である。生き残りの広島一中の級友は「オペラたー、何ならー」と冷やかした。

    その後、広島大学医学部に入り、東の藤原義江か西の阿部幸次かと言われたオペラの阿部先生に師事し、卒業後は迷うことなく耳鼻咽喉科を選んだ。医学生時代の1954年から毎年NHK広島放送局主催のオペラ公演に出演し、61年にはNHK広島放送会館落成記念オペラ『椿姫』のアルフレードを演じた。65年イタリア・パビア大学耳鼻科に留学。その間、ミラノのヴェルディ音楽学院でマニョーニ先生についてオペラを学んだ。帰国後、助教授、教授、病院長、学部長と忙しい職に就いても広島のオペラには関与して、『椿姫』『蝶々夫人』など多くの主役を務めた。

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