著者は済生会熊本病院副院長兼心臓血管センター部長・循環器科部長として活躍されたが、道半ばにして急逝。享年55。
早崎和也 著(熊日新書、熊本日日新聞情報文化センター、1999年刊)
お別れの式で「みなさん、こんにちは」と、故人の生前の肉声を聴くことは当時としては驚きであり、心に響いた。
九州・熊本の地に全国トップレベルの循環器医療体制を創設すべく、東京女子医科大学に修練に行かれた早崎和也先生が、帰院後、指導的立場となられてからの思い、そして自らの命の限りを知った時の「生きる」ことへの思いを遺されたのが本書である。そこには悲愴感や絶望感というものはない。早崎先生の、医師という仕事への情熱、姿勢、人生観が自然と伝わってくる。
1995年12月、寒い日の病院ゴルフコンペの後、頭痛と下痢を発症したのが、すべての始まりであった。正月を過ぎても頭痛が取れず、多忙な外来を予約制にして脳外科で検査したところ、悪性度の高い脳腫瘍が見つかった。当時、私もその画像を見たが、すでに著明な脳浮腫を伴っていた。
残り326文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する