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発展を続ける科学の中で求められる医学・医療[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.20

髙栁宏史 (熊本大学病院地域医療支援センター)

登録日: 2020-12-30

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「医学における発展の潮流は専門分化と総合・統合化との間を振り子のように繰り返しており、その専門分化は頂点に達した」というのは、1923年当時のハーバード大学の教授であったPeabody博士のコメントです。しかし、その後も医学はとどまることなく発展し続け、高度に専門分化しました。American Board of Medical Specialtiesに承認された専門領域の数は、第二次世界大戦前は15領域でしたが、現在は24領域まで増えています。ただ、1991年にAmerican Board of Medical Genetics and Genomicsが承認されたのを最後に、既に30年が経過しようとしています。Peabody博士のコメントから100年を経て、いよいよ発展し続けた医学においても総合・統合化の潮流がくるのでしょうか。

2029年には人工知能(artificial intelligence:AI)が人類の知性を超えるというシンギュラリティ(技術的特異点)を迎えると予想されていました。しかし、昨年発表された量子コンピュータの桁違いの演算能力が実用化されるようになったら、予想よりももっと早くにAIは人類の知性に到達してしまうかもしれません。

AIの医療分野における活用は日進月歩です。様々な医療における臨床的判断をAIが担うようになるほど利活用が進んだ場合、果たして医師はどのようなことを医療の中で担うようになるのでしょうか。
様々な臨床的判断がAIをベースにした臨床支援システムによってサポートされるとしても、医は仁術といった人と人の共感や思いやり、そんな医療の原点は、人である医師に求められることは続くと思いますし、もしかすると重視されるようになるのかもしれません。

現在、新しい専門医制度で養成が始まっている総合診療専門医の総合とは、心身分離を乗り越えた医学における臨床哲学によって裏打ちされた医師が、継続的な責任のもとに構築される患者との間の暗黙レベルの関係性によって実践される診療であるとされます。そして、そのような総合的な診療は新しい科学技術の発展によっても損なわれることはなく、社会にとっても必要とされる能力だと思っています。
やはり、100年を経て総合・統合の波がくるのかもしれません。

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