地方大学の総合診療科で勤務したのち都市部の総合病院である前職場に昨年復職した。9年ぶりの当院は移転・名称変更し救命救急の機能が強化され、入院期間のより短い濃度の濃い急性期医療が展開されるようになっていた。
一方で、2020年度より初期臨床研修が変更された。初期臨床研修制度開始当時に比し、人口動態、疾病構造や医療提供体制の変化、医療自体への価値観・パラダイムの変化を背景として、より総合診療的側面が強化されたように感じられるものだった。そして、本稿を執筆する2020年9~10月にまた大きな変化が出つつある。
今回の変化の鍵は地域医療研修になる。医師不足地域への医師の供給が大きな問題となり、新専門医制度における専攻医研修でも、年々医師不足地域の医療機関との連携が求められるようになっている。今回、初期研修制度でも地域医療研修の期間延長、医師不足地域での研修について議論されていることが明らかになった。
私自身、医師になった当初より総合診療を志して医師不足地域での研修を重ねてきたので、医師不足地域での研修のやりがいも苦労も自覚しており、こういった経験は貴重な機会になると思ってはいるが、今回の議論には教育の視点が追いついていないのでは、と一抹の不安を感じる。基幹施設での初期研修も働き方改革の推進により、初期研修医の診療経験・教育を受ける時間はかなり減少している結果、初期研修医が臨床能力を獲得し成長するまで、以前に比し長期間を要していると感じる。
こういった背景の初期研修医が医師不足地域にて長期間研修することで、どれだけの成長がみられるのか。2年間の研修修了時に成長が見込めなかったら、専門研修時の導入にも影響がでる。
研修医の成長には、診療機会の提供と適切・効果的な教育の両輪が必要不可欠である。地域医療研修を受ける医師不足地域の病院に十分な教育体制があることを、研修プログラムの責任者としては受け入れ時に是非担保して頂きたい。そして、地域医療研修先を探すことが各研修病院の努力となっている現状、是非医師不足地域の都道府県の行政が介在し、教育の質の担保できる研修先をご提示頂けることを希望する。