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コロナのおかげ[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.42

木内良明 ( 広島大学病院病院長・医系科学研究科視覚病態学教授)

登録日: 2020-12-31

最終更新日: 2020-12-21

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大学病院の使命は診療、研究、教育であると言われています。コロナウイルスの流行にすべての分野が影響を受けました。

眼科診療はこれまでも診察時にアデノウイルスに対する標準予防策として手袋着用、診察後はアルコールによる手指消毒および細隙灯顕微鏡のアルコールによる清拭、眼圧計のチップの交換を行っていました。これは感染予防に非常に有効です。コロナ対策としては、それに診察時のマスクの着用が追加されただけです。あまり苦痛ではありません。標準予防策の重要性を医局員が再認識したこと、予防策の順守率が高まったことはコロナのおかげです。

広島県がコロナウイルス対策を綿密に立ててくれました。県内の病院の役割が明確になり、当病院はECMOを使う可能性がある重症者を受け入れる役割となりました。ECMOは装置があれば誰でも使えるようなものではないこと、広島大学救急部のECMO使用経験は西日本で一番多いことなどを知りました。

研究面では、新規の研究プロジェクトがしばらく止められたことがダメージでした。インドネシアに帰国している留学生は彼自身が感染していて、隔離されていました。日本にしばらく戻れそうにありません。

学会や研究会が軒並み延期、中止、あるいはWeb開催になりました。Web開催と言っても様々な形態があります。時間とともにより良い形に収束していくようです。学会や研究会の将来は、Webと現地開催のハイブリッドになると予想します。教育面でも学生講義はWebによる遠隔講義が主体となりました。みんながWeb会議や授業に慣れたということは、コロナのおかげと思います。医局会もWeb医局会になっています。

Webの限界も見えてきました。現実に人と対面して話し合う重要性も認識されています。Webでいろいろと事が済むことが多くなり、移動の時間が少なくなりました。新幹線のポイントや飛行機のマイレージがたまりません。しかし、その空いた時間で、このような文章も書けるようになりました。コロナのおかげです。

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