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「ムントテラピー」の復活を─“ストレス社会”の処方箋に[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.73

夏目 誠 (大阪樟蔭女子大学名誉教授)

登録日: 2021-01-03

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精神科医の夏目誠です。昨今、あまり「ムントテラピー(Mund-Therapie)」が、あまり行われなくなりました。しかし日常臨床では、患者さんの悩みやストレスに対し、“端的な言葉”で対応法を指示する、簡易指示的精神療法と言うべき「ムンテラ」の復活が必要と考えます。なぜか? 精神科医などが行うカウンセリング希望者は減少の一途。思うのに、患者さんが求めるのは指示的対応なのだ。「私を理解してくれる先生が、方針を端的な内容で示唆する。それで対応する」とのニーズが増加しています。特に実地医家の先生の同意は多いです。

実地例を以下に、示します。

主治医 :上司の件で、悩んでいますね。
患者さん:どうすれば良いのでしょうか?
主治医 :島倉千代子さんの大ヒット曲「人生いろいろ」、聞いたことがありますか?
患者さん:いい曲ですね。
主治医 :なぜ、大ヒットしたか。「多様化社会」になり、様々な人がいるので、対人ストレスで悩む人が増えたからでしょう。
患者さん:「多様化社会」か。気づかなかった。
主治医 :「人生いろいろ」の歌から学べるのは「上司もいろいろ……」いる。
患者さん:いろいろか……。
主治医 :上司も様々なタイプがいる。あなたも、それを認めるほうが悩むより対処しやすいよ。
患者さん:そうか。
主治医:上司から見れば、部下もいろいろ。
患者さん:なるほど、「部下もいろいろ」ですね。

例示のように、主治医は「『人生いろいろ』が大ヒットした理由のひとつは、対人関係に悩む人が増加したため。『多様化社会』で様々な人がいるので、対処が難しくなった。スパッと割り切れるように示唆する曲だからね」、「上司も様々。いろいろだよ。そして部下も、いろいろいるよね。そう、割り切ったほうが楽だよ」と、指示的に説明します。ムンテラの活用です。


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