令和2年は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、世界中の日常生活が一変した。ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン博士は、「コロナ禍のポジティブな側面は、我々に深く考えるきっかけを与えてくれた点だ」と指摘している。
多くの医学会が中止や延期になり、開催されてもWebかハイブリッド開催になり、各種会議もWebになった。地方在住の私にとっては大変有難いことで、1~2時間の会議のために、丸1日を潰して、多い時は週3回も東京に日帰り出張していたが、今はパソコンの前に座るだけでよくなった。自由な時間が大幅に増え、あれやこれやと悩みながら過ごした。これからの医療はオンライン診療や遠隔医療など、ITを駆使して三密を回避する診療形態を取らざるをえないこと、大幅な減収減益となった病院経営をどうやって立て直すか、働き方改革や地域医療計画の推進にも取り組まなければならない、……等々、考えることは山積している。
新型コロナウイルス感染者の多い都会を避け、単独登山や山でのソロキャンプが人気だそうである。私は家内とミニチュアダックスを連れて休日を過ごすため、山登りをする気はないが、高原や山麓をトレッキングし、野外で昼飯を摂るのは魅力的である。阿蘇や九重連山に行って、愛機のライカQ2やM4で風景や野花の写真を撮ろうと思い立ち、早速、メスティンという飯盒を購入した。これは近年人気のアウトドア用品で、固形燃料1つで簡単にパエリアや炊き込みご飯をつくれるという優れものである。手料理の楽しみを知ると、さらにいろんな食材を買ってきて、パスタやアクアパッツァなどのイタリアンにも挑戦してみた。こちらは野外と言うわけにはいかないので、キッチンで家内とあれこれ言い合いながらつくっているが、そこそこ美味しく、ワインを飲みながら手料理を楽しむ週末は、今では私の至福の時間になっている。
凡人の私は深く考えることはできないけれど、人生を楽しむきっかけを得られたことが、私にとってのコロナ禍のポジティブな側面と言えようか。