昨年はコロナ禍で外出が減り、自宅で読書する機会が増えた1年でした。そして評判となった書籍を再読してみました。アルベール・カミュの「ペスト」、ダニエル・デフォーの「ペストの記憶」などの作品です。また、パンデミックを扱った小松左京の「復活の日」、これは50年以上前の作品です。学生時代に細菌学の授業で紹介され、読んだ記憶があります。映画化されたのは自分が医者になってからでしょうか。
「ペストの記憶」や「ペスト」を読むと300年以上前のロンドン、そして70年前オランでの語り手H・Fや医師ベルナール・リウーの眼前の光景は、国内外でいま起こっているものと変わりません。不安や恐怖の中で、流言飛語、自暴自棄な行動、買占めや売り惜しみ、モラル崩壊、詐欺などの犯罪。もちろん、感染流行で発揮される人の勇気、優しさ、美しさがあります。科学や技術は格段に進歩したものの、人間の本質は変化していないようです。そして、感染者への偏見や差別の問題があります。医療スタッフの子どもさんが登園を断られたとの話も聞きました。ウイルスは様々な物を運んできました。不安の増大で潜んでいた社会の負の側面が姿を現すようです。
国際的人道支援団体である日本赤十字社は、災害や紛争、感染症流行時に国内外で救援活動を行っています。今回の大型クルーズ船の救護・防疫活動もその1つです。それらの活動の中で「こころのケア」を担当する臨床心理士をはじめとしたスタッフが、その経験を生かしてサポートガイド集「こころの健康を保つ」を作成しました。さらに「ウイルスの次にやってくるもの」「新型コロナウイルスの3つの顔を知ろう!」など、アニメ動画も誕生しました。不安や偏見の起こる仕組み、対処法に触れています。日本赤十字社のホームページや検索サイトから閲覧可能です。私たちは職場で共有し地域へ発信しています。皆様にご紹介いたします。