在宅医療を中心とした地域医療に長年取り組み、今年3月には地域に貢献した医師を顕彰する日医の第2回赤ひげ大賞を受賞した。
受賞で変わったのは取材と講演が増えたこと。取材記事を読んだ患者家族から「覚えていてくれて嬉しい」と改めて感謝の声が届いた。野村さんが講演で使用する患者の写真には目隠しが入らない。遺族に連絡すると、故人の顔が出ることを拒否せず、「亡くなった家族がよみがえるようだ」と快諾されるからだ。
勤務医として患者を病院で見送るうち「住み慣れた家で人生の最期を過ごしたい」という患者の願いに応えたいと考えるように。「かかりつけ医・地域医療・在宅医療」をコンセプトに横須賀市の西南エリアで開業した。西は相模湾、東は山に挟まれたのどかな地域だ。
常に約100人の在宅患者を抱え、年間約40人を看取る。年に一晩しか咲かない月下美人の花を見届け、数日後亡くなった患者や、「最期に先生と飲みたい」と頼まれ、杯を酌み交わした患者。看取りの数日後、外来を訪れて感謝を伝える患者家族も多い。開院後に看取った患者数はもうすぐ勤務医時代に死亡診断書を書いた600人に近づこうとしている。
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