好酸球性中耳炎は,好酸球性ムチンと呼ばれる好酸球が著明なニカワ状の中耳貯留液を特徴とする疾患である。気管支喘息や好酸球性副鼻腔炎に合併することが多く,適切な治療が行われなければ感音難聴が進行し,聾に至ることもあり,難治性の中耳炎の代表的な疾患のひとつである。
「中耳貯留液に優位な好酸球浸潤を認める慢性中耳炎もしくは滲出性中耳炎」を唯一の必須項目とする。さらに4つの小項目「ニカワ状の中耳貯留液」「従来の治療に抵抗」「喘息合併」「鼻茸合併」のうち2項目以上を満たす場合に確定診断とする1)。ただし,好酸球性肉芽腫性血管炎と好酸球増多症候群に合併するものは除外する。具体的には,気管支喘息または鼻茸(好酸球性副鼻腔炎)を合併し,ニカワ状の耳漏から優位な好酸球浸潤が確認できた場合に確定診断が得られる。これらの合併症が明らかでない場合には,抗菌薬や鼓膜チューブ挿入などの治療で難治性であることが必要条件となる。
中耳粘膜の著明な肉芽形成により耳茸を呈することもあり,真珠腫性中耳炎や腫瘍性疾患との鑑別が必要な場合もある。
好酸球性炎症を制御するため,局所治療と内服薬を中心とした全身治療を組み合わせる。局所加療の目的は,好酸球由来の組織障害性蛋白を豊富に含んだニカワ状の中耳炎貯留液を速やかに除去すること,ならびに局所の好酸球性炎症を制御することにある。
局所治療薬としてはステロイドの点耳または鼓室注入を用いる。また,ニカワ状貯留液の除去を目的に,局所ステロイドの前処置としてヘパリン製剤による耳浴や点耳を用いることもある。
全身治療としては,好酸球の浸潤抑制などの効果が期待できる抗アレルギー薬の中から作用機序が異なる2~3種類の薬剤を併用する。具体的には,抗ロイコトリエン薬,phosphodiesterase(PDE)4阻害薬,後期の第2世代抗ヒスタミン薬,および抗PGD2・TXA2薬などを使用する。また,これらの治療で効果がなく経過中に骨導聴力が低下するような場合には,内服ステロイドの適応である。血中好酸球数が20%以上に上昇するような症例でも,難聴進行のリスクがあるため内服ステロイドの投与を検討する必要がある。
経過中に中耳貯留液の性状がニカワ状から粘性の低い膿性に変化した場合には,感染の併発を考慮して抗菌薬の使用を検討する。気管支喘息を合併している症例では,喘息の管理状況も確認し必要に応じて呼吸器内科にコンサルトする。
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