新型コロナワクチン接種が始まった2月17日から3月21日までの間に医療機関から報告された副反応事例のうち、専門家の評価で「アナフィラキシー」とされた事例は47件に上ることが、3月26日に開催された厚生科学審議会と薬事・食品衛生審議会の合同部会の資料で明らかになった。アナフィラキシーの100万回接種あたり報告件数は81件となり、単純な比較では英国などの報告件数を大幅に上回っている。厚生労働省は今後アナフィラキシーを正確に評価するため、診断の根拠となる臨床所見の具体的な記載などを医療機関に求めていく方針だ。
ファイザーのmRNAワクチン「コミナティ筋注」による国内での新型コロナワクチン接種は、医療従事者等を対象に3月21日までに57万8835回行われ、その間、副反応疑い報告の枠組みで181件が「アナフィラキシー」として医療機関から報告された。
専門家の評価は「ブライトン分類」に基づいて行われ、181件中47件がアナフィラキシーの症例定義に合致する「レベル1~3」、132件が「レベル4」(十分な情報が得られておらず、症例定義に合致すると判断できない)、2件が「レベル5」(アナフィラキシーではない)と評価された(表1)。
新型コロナワクチン接種後のアナフィラキシーについて海外のデータを見ると、「1220万回接種中237件(100万回接種あたり19.4件)」という英国MHRAの報告、「994万回接種中47件(100万回接種あたり4.7件)」という米国CDCの報告などがある。英国のデータが「アナフィラキシー様反応」を含めて報告されたものであることも踏まえると、日本の「58万回接種中47件(100万回接種あたり81件)」という数字は非常に高く見える。
3月26日の合同部会では、現時点で海外のデータと比較するのは難しく、また、アナフィラキシーとして報告された症例の大半は軽快しており、ワクチン接種のメリットはリスクを上回っていることから、副反応の動向を注視しつつこれまで通りワクチン接種を進めていくことを確認。
ただ、ブライトン分類1~3に該当しない症例が「アナフィラキシー」として報告されるケースが多く、4月12日から始まる高齢者へのワクチン接種で報告件数の大幅な増加が予想されることから、厚労省は、「アナフィラキシーと診断した根拠となる臨床所見をできるだけ具体的に記載する」よう医療機関に求めていく方針を示した。
委員の間からは「現場でブライトン分類に基づいて評価し、1~3に該当するものを報告するよう周知すべきではないか」との意見も出されたが、ブライトン分類は複雑で現場では使いにくい面がある(表2参照)ことから、厚労省はブライトン分類の使用までは現場に求めない考えを示した。多屋馨子委員(国立感染症研究所)は「ブライトン分類がすぐに分かるアルゴリズム」を作成したことを紹介し、現場で使えるツールの作成を厚労省に提案した。
26日の合同部会では、先行接種に参加した医療従事者等(国立病院機構、JCHO、労働者健康安全機構の傘下病院)を対象に進めている「観察日誌」による健康調査の中間報告も提出された。
その中では、1回目接種1万9035例、2回目接種3933例の観察日誌を集計した結果として①接種後の「発熱(37.5℃以上)」は1回目(3.3%)よりも2回目が35.6%と高率、②接種部位の「疼痛」は1回目・2回目とも被接種者の90%超が自覚、③全身症状は1回目よりも2回目が高率で、2回目接種後に67.3%が「倦怠感」、49.0%が「頭痛」を自覚─などのデータが示されている(表3)。
同調査の代表研究者を務める伊藤澄信委員(国立病院機構本部総合研究センター長)は「1回目と2回目で著しく違うのは全身倦怠感と頭痛」と述べ、いずれも2回目接種翌日に自覚したケースが多いと報告。また、年齢・性別の解析をすると「若年者」「女性」の副反応の頻度が高いとし、副反応で接種後に勤務を休んだ事例は217件に上ることも報告した。
伊藤委員は「ワクチンに関しては年齢が高くなるほど副反応が出なくなるのは分かっていたが、女性と男性でこれほど違いが出るとは思っていなかった。少しびっくりしている」としながら、数字が一人歩きしないよう現段階では確定的な数字は提示していないと説明。他の委員からは「女性が多いのは日本特有のことか」などの声が上がった。副反応の男女差に関する詳細な解析の行方も注目される。
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