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腎疾患合併妊娠[私の治療]

No.5059 (2021年04月10日発行) P.49

小川正樹 (東京女子医科大学産婦人科学講座教授)

登録日: 2021-04-08

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  • 慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)を合併する妊娠では,妊娠経過中に,尿蛋白の増加や腎機能の低下を認めることがある。さらに,妊娠高血圧症候群,流・早産,胎児発育不全の発症率も一般集団に比し上昇すると考えられている。

    ▶診断のポイント

    自己免疫疾患や糸球体腎炎は若年女性でも比較的認められる疾患であり,このような疾患を背景に,CKDを伴う妊娠女性も少なくない。CKDは,尿蛋白と糸球体濾過率(GFR)の低下を主症状とするもので,それらの程度により重症度は異なってくる。また,血清クレアチニン値により重症度分類され,1.4mg/dL未満を軽度,1.4mg/dL以上2.8mg/dL未満を中等度,2.8mg/dL以上を高度とする。中等度~高度の腎機能障害では,妊娠予後は不良となる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    CKD合併妊娠における妊娠中の管理については,十分な安静と高血圧等への対症療法が主となる。上述のように,CKD妊婦では,妊娠高血圧症候群,胎児発育不全の発症率が上昇することより,妊娠・胎児発育の評価は必須である。妊娠初期~中期にかけては2~4週ごとの妊婦健康診査時に実施される超音波検査により,胎児発育等の評価を行う。34週以降では,高血圧の発症リスクが増加することより1週ごとの評価を実施する。

    妊娠初期に高血圧を認めない妊婦であっても,妊娠経過中に高血圧をきたすことがある。したがって,妊娠初期から妊婦に自身の血圧を意識させる意味でも,自宅での血圧測定を指示する。

    妊娠許可基準としては,①基礎疾患の臨床症状が安定していること,②蛋白尿が1.0g/日以下であること,③血圧が140/90mmHg以下であること,④催奇形性等のある薬剤を中止・変更していること,が条件となる。しかし,基準を超えているからといって,妊娠を許可できないわけではない。また,基準を超えているとの理由で人工妊娠中絶が適応となるわけではない。ネフローゼ症候群が基礎疾患である場合には,副腎皮質ステロイドを服用していることがあるが,プレドニゾロン換算で10~15mg/日以下にコントロールされていることが望ましい。

    妊娠前から服用しているアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI),アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB),抗凝固薬であるワルファリン(ワーファリンなど)は,妊娠が判明した時点で中止する。ACEIやARBは,催奇形性および胎児毒性があるため妊娠中は禁忌である。また,ワルファリンも胎芽病の原因となる。抗血栓療法が不可避とされる妊婦では,未分画ヘパリンの皮下注に変更する。

    高血圧を認める場合には,降圧薬であるメチルドパ,ヒドララジン,ラベタロールを使用する。妊娠20週以降では,ニフェジピンを開始または併用することができる。

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