当院が開院した頃、市内の小学校に通う6年生のS君(12歳6カ月)の担任が当院を訪れ、「S君は、学校で走ることができず、体育の時間は先生が手を引いてよちよち歩くような状態だったのに、ある日突然、運動場のトラックを疲れて倒れるまで走れるようになった。貴院で何か指導したのか?」と質問されました。
ところでS君は、しばらく前から、右眼視力低下を主訴に当院を受診していました。また、運動が苦手、探し物がみつけられない、人と目を合わせないなどの訴えもあり、当院が併設している視覚発達支援センター(以下、センター)の検査も希望しての受診でした。眼科の視力検査で、右0.2、左1.2でしたので、右眼も1.2になるよう眼鏡を処方し、視力の問題は解決しました。しかし、注視時間は短く、衝動性、追随性の眼球運動は不良で、センターの検査でも、視覚記憶課題などに弱さが認められました。図1は身体意識を確認するDAM(Draw a Man Test)で、評価年齢は6歳8カ月(示数53)と大変低い値でした。S君は自閉傾向もあるのですが、まず、眼球運動のトレーニングを教示し経過を診ていることを担任の先生に説明したところ、それで走れるようになったのか、と大変驚いておられました。
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