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Zoom講義、顔出し問題[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(351)]

No.5062 (2021年05月01日発行) P.103

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2021-04-28

最終更新日: 2021-04-27

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今年も講義が始まった。文科省の方針で、大学本部から、講義はできるだけ対面でおこなってほしいという指導があった。しかし、講義室のキャパの関係で十分な感染対策をとっての対面講義など不可能である。

そこで対面とリモートのハイブリッド方式が推奨された。しかし、機材が不十分だし、2通りの対象に向けて話すのがむずかしい。それに、ハイブリッドにしても、ほとんどの学生がリモートを選択するだろう。

という理由で、Zoomによるリモート講義を選択。実際にハイブリッド方式で講義している科目もあるが、案の定、リアル出席者は100名中10名程度らしい。たった10名のために、リモートで受ける学生にとってはわかりにくい講義になってしまう。いささか馬鹿げた状況ではないか。

Zoom講義、昨年は全員顔出しを原則にしたのだが、禁止されてしまった。なんでも、学生からのクレームがたくさんあったらしい。どういうこっちゃねん。それくらいええんちゃうんか、とは思うけれど、ルールだからしかたがない。なので今年は、できるだけ顔出しで講義を聴いてくださいねとお願い。

自発的に顔を出してくれるのは、せいぜい1割程度だ。フェイスブックで同業者に尋ねてみたら、どこもその程度とのこと。理由が知りたいので、学生に尋ねてみた。

女子学生は、スッピンだからという理由が圧倒的に多かった。男子学生は、寝癖が強いからみっともないというのが10名近くも。ホンマですか、そんなに寝癖の強い子が多いんですか。あと、見られるのがイヤ、というのも結構あった。それより多かったのは、みんなが顔出ししていないから、という理由。う~ん、なんやねんそれは。

逆に、1割程度が顔を出しているのなら、講義に対するレスポンスはわかるのだから、できるだけ顔を出せと指導する必要はないのではないか、というコメントがあった。言われてみたらそうである。ちょっと考えてみた。それに対する答は「礼節」。

Zoomとはいえ講義である。教えてもらうには、それなりの姿勢が必要なのではないか。そこそこでいいから身なりを整えて、きちんと聞いていますよ、というところを見せたらどうか。私なら、絶対にそうする。
まぁ、こういう考え方は昭和までは一般的だったけど、平成で漸減し、令和で消えたんかもしれませんな。ちょっと寂しいけど。

なかののつぶやき
「クラスター感染ではないけれど、阪大医学部の学生にもパラパラと新型コロナウイルスの陽性者が出ています。上級生は臨床実習があるので、クラブ活動の全面禁止など、他の学部以上に厳しい措置をとらざるをえないのが実情です。学生たちにはちょっとかわいそうだという気がしますが、なんともいたしかたないですね」

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