疾患の定義については,他稿を参考にして頂きたい。在宅患者にパーキンソニズム(Parkinsonism)を認めた場合は,薬剤性パーキンソニズム,正常圧水頭症などの治療によって改善できる疾患もあるため,脳神経内科医などの専門医との連携が必要と考える。一般的に在宅では,進行期の患者が対象になるため,合併症対策や全身管理が問題になる。ここでは主として進行期のパーキンソン病(Parkinson's disease)について述べる。
パーキンソン病の症状は,大きく運動症状と非運動症状にわけられる。
①無動:運動開始遅延,動作緩慢,小声,まばたきの減少,仮面様顔貌,流涎
②振戦:静止時振戦
③筋強剛
④姿勢保持障害:後方突進現象
など
進行した患者では,これらに加えて,姿勢異常:腰曲がり,首下がり,体幹が斜めに傾くピサ徴候,構音障害,小声,嚥下障害,流涎などの症状がある。
多彩な症状を呈する。
①睡眠障害:日中の過眠,突発性睡眠,レム睡眠行動障害,下肢静止不能症候群(むずむず脚症候群)
②自律神経障害:起立性低血圧,食事性低血圧,頻尿,便秘,性機能障害,発汗障害
③精神認知行動障害:うつ,不安,アパシー,幻覚,衝動制御障害,認知機能障害
④感覚障害:嗅覚障害,痛み
など
鑑別の補助診断として,123I-MIBG心筋シンチグラフィー,ドパミントランスポーターシンチグラフィー(DATスキャン),脳血流シンチグラフィーが行われている。いずれも鑑別の目的と進行度を考慮して行うべきである。進行度を評価する検査法は確立していないが,脳萎縮や脳血管障害などの合併を評価するために頭部MRI検査などを行う。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)に取り組むべきである。パーキンソン病および多くのパーキンソン症候群は慢性進行性であり,根本的な治療法はない。また認知症を合併することも多いため,事前に,患者,代弁者(家族など),医療者が,患者が大切にしていることや終末期を含めた今後の医療や介護について話し合っておくことが重要である。
在宅医療の対象になる進行期のパーキンソン病患者も日本神経学会監修の「パーキンソン病診療ガイドライン2018」1)を基本とする。パーキンソン病の重症Ⅳ度およびⅤ度の日常的に介助が必要な状態では,薬剤による改善は限定的であり,生活を継続するという在宅医療の視点が重要になる。
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