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サルコペニア・廃用症候群の予防とケア[私の治療]

No.5063 (2021年05月08日発行) P.32

荒井秀典 (国立長寿医療研究センター理事長)

登録日: 2021-05-06

最終更新日: 2021-04-28

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  • サルコペニアは,高齢期にみられる骨格筋量の減少と筋力もしくは身体機能(歩行速度など)の低下により定義され,筋肉の機能低下状態を意味する。2016年10月には国際疾病分類(ICD-10)のコードM62.84を取得し,従来の症候群としての位置づけから,疾患としての位置づけに変更された。

    ▶アセスメントのポイント

    地域在住高齢者の10~20%がサルコペニアを有するとされ,以下の状態にある高齢者は積極的にスクリーニングを行うことが望ましい。
    ・機能低下や機能障害が最近現れた
    ・1カ月の間に5%以上意図しない体重減少があった
    ・うつ気分または認知機能障害
    ・繰り返す転倒
    ・栄養障害
    ・慢性疾患の合併(慢性心不全,慢性閉塞性肺疾患,糖尿病,慢性腎臓病,膠原病,結核感染,およびその他の消耗性疾患)

    ▶状態の把握・アセスメント

    スクリーニングとして,下腿周囲長が男性で34cm未満,女性で33cm未満であればサルコペニアを疑う。SARC-F質問票の5つの質問(①4.5kgの荷物の持ち運びをするのはどのくらい困難ですか? ②部屋の中を移動するのはどのくらい困難ですか? ③椅子やベッドから立ち上がるのはどのくらい困難ですか? ④階段10段を上るのはどのくらい困難ですか? ⑤過去1年間で何回転倒しましたか?)に対し,①~④には0点=困難でない,1点=いくらか困難,2点=非常に困難,あるいはできない,⑤には,0点=なし,1点=1~3回,2点=4回以上,で回答してもらい,合計が4点以上の場合はサルコペニアの可能性が高い。また,自分の人差し指と親指で輪をつくり,ふくらはぎを囲んだとき,ちょうど囲める,または隙間ができる,のいずれかの場合は,サルコペニアの疑いありと考える。
    上記にて疑いありと考えられた高齢者に対しては,握力評価か,椅子立ち上がりテストを行う。前者の場合,男性28kg未満,女性18kg未満を,後者の場合は5回目に椅子から立ち上がるまでの時間が12秒以上の場合にサルコペニアの可能性の高い高齢者とする。
    一般の診療所や地域であれば,この段階でサルコペニアの可能性ありとされた高齢者に,介入のための評価と対策を行う。あるいは状況によっては,病院など筋肉量の評価を行える設備(体組成やDXAなど)の整った施設で精査することを勧める。

    残り1,427文字あります

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