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看取り[私の治療]

No.5063 (2021年05月08日発行) P.63

吉澤孝之 (要町病院院長/呼吸器内科)

登録日: 2021-05-10

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  • 「在宅での看取り」は単に自宅で死亡診断をすることではなく,患者・家族が最期まで納得した生活を継続でき,人生を生ききれるよう支援することが重要である。
    患者の意思決定支援のためアドバンス・ケア・プランニング(ACP)を繰り返し,終末期の医療・ケアをはじめとする人生の最終段階における様々な選択について,患者・家族の希望を最大限叶えられるよう多職種で協働する。
    医療チームが行う在宅での終末期ケアは,患者が穏やかに最期を迎えられるよう苦痛を緩和すること(苦痛緩和)と家族が悔いのない介護ができるようにサポートすること(看取りの支援)である。
    看取りの主役は本人と家族であり,臨終の際には遺族が患者の近くにいられるよう配慮するとともに,遺族への接し方や発言に注意しながら遺族の労と悲嘆をねぎらう配慮が必要である。

    ▶治療の考え方

    病状の変化に応じて患者・家族の気持ちも変化するため,ACPを繰り返し最期まで患者・家族の希望の実現に向けて多職種で協働する。ACPのプロセスは患者・家族と一緒に考える共有意思決定(shared decision making)であり,医療現場における合意形成のインフォームドコンセントとは異なる。医療者が患者・家族と対等に対話できる関係づくりが重要である。

    主治医の予後予測に基づき治療やケアの見直しを多職種協働で行い,今後起こりうる症状の変化やその対応について情報を共有しておく。
    終末期の在宅医療には家族へのグリーフケアも含まれる。医療者は家族についてケアチームの一員であるとともに,グリーフケアの対象となる「第2の患者」であるという認識が必要であり,そのためにも信頼関係の構築が必須となる。

    ▶状態の把握・アセスメントのポイント

    主治医は正しい医学的判断と予後予測が求められるが,そのためには疾患別の終末期の経過(病みの軌跡:trajectory curve)について理解しておくことが必要である。

    悪性腫瘍では比較的最期まで日常生活活動(ADL)が保たれ,最期の1~2カ月で急激に低下するため予後予測は比較的容易であるが,最終末期には様々な症状が出現し,介護度も急激に上がるため,あらかじめ準備をしておく必要がある。

    慢性疾患(慢性心不全や慢性呼吸器疾患など)では増悪と寛解を繰り返しながらADLが低下し,最期は比較的急峻な経過をたどることが多い。増悪時は改善する可能性があるため終末期の判断やACPのタイミングを逃すことが多く注意が必要である。

    老衰や認知症では心身の機能がゆっくりと穏やかに低下するため,いつから終末期とするかの判断が困難であるが,長い経過の中で自然に患者・家族の受容ができていることも多く,介護職を中心とした体制が整っていれば看取りの支援は難しくない。

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