「外勤先の診療所外来に不明熱の患者がいるので、入院で精査してもらえないか」。
医局の先輩から連絡があったのは、私が大学の医局を離れ、市中病院に勤務しはじめて間もない時期だった。入院してきた患者さんは60歳代で、数カ月にわたる発熱と倦怠感、体重減少があるが、診察しても診断の手がかりがつかめない。感染症や膠原病らしくはないので、何らかの腫瘍だろうと考え胸腹部CTを行ったが、異常が見つからなかった。次の手として、その当時はFDG-PETが一般的でなかったので、ガリウムシンチグラフィーを行うことにした。
数日後に戻ってきた結果を見て、予想外の所見に驚いた。両膝のあたりに左右対称に強い集積がある。よく見ると、膝、足首、肘、肩のあたり、正確に言うと大腿骨などの長管骨の両端に強い集積が認められたのである。整形外科医は「こんなの見たことがない」と言いながら、脛骨の生検をしてくれた。病理診断は非特異的骨髄炎。しかし、血液培養は何回実施しても陰性で、何よりシンチの所見が特異だ。骨髄炎という診断では納得できない。私は病理医に直接話しに行った。「臨床的には単純な骨髄炎とは考えにくい。このようなシンチの所見は見たことがない。何か私の知らない疾患があるはずだ」。病理医は首をかしげながらも、もう一度検討してくれることになった。
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