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性器ヘルペス[私の治療]

No.5068 (2021年06月12日発行) P.41

渡辺大輔 (愛知医科大学皮膚科学講座教授)

登録日: 2021-06-12

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  • 性器ヘルペスは,単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)1型(HSV-1)または2型(HSV-2)の感染によって,性器に浅い潰瘍性または水疱性病変を形成する疾患である。本疾患の発症には,HSVに初めて感染したときと,既に潜伏感染していたHSVの再活性化によるときとの2種類があり,一般的に,前者は病巣が広範囲で症状が強く,発熱などの全身症状を伴うことが多いが,後者は症状が軽く,全身症状を伴うことは少ない。

    ▶診断のポイント

    外陰部に浅い潰瘍性や水疱性病変を認めた場合は性器ヘルペスを疑う。病変の数は,初発では数個~多数であり,広い範囲に及ぶこともあるが,再発では一般的に少なく,限局性で,病変も小さい。再発頻度は月に2~3回から年に1~2回までとばらつきが多い。外陰部に潰瘍性病変を形成する疾患は多くあるので,診断に迷う例では専門医にコンサルトする。潰瘍の範囲が広く難治性の場合は,AIDSなどの免疫抑制状態を考慮する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    初発例ではできるだけ早期から,十分な期間,抗ヘルペスウイルス薬の全身投与を行う。重症例や免疫抑制患者では点滴静注を選択する。再発例では,病型や再発頻度に合わせ,適切な治療法を選択する。

    全身療法の基本は抗ヘルペスウイルス薬の内服である。初発病変に対しては,早期に診断し,抗ウイルス薬を全身投与することにより,潜伏感染ウイルス量を減らし,再発回数を減らせる可能性もあるため,十分に治療することが望ましい。性器ヘルペス初感染や全身症状の強い例,免疫抑制患者の性器ヘルペスでは,入院の上,点滴静注を行う。おおむね年3回以上再発する性器ヘルペスの場合はpatient initiated therapy(PIT)を,また,おおむね年6回以上再発する場合は再発抑制療法を考慮する。

    【治療上の一般的注意】

    核酸アナログ系の抗ヘルペスウイルス薬は,腎排泄性であるため,腎機能に応じた適切な減量を行う。また,性器ヘルペスでは外陰部のみならず,腟部,子宮頸部にもウイルス再活性化部位があるため,外用薬のみの治療は推奨されない。

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