菅義偉首相は8月25日、緊急事態宣言の対象地域拡大(8道県追加)決定後の記者会見で、宣言地域を中心に新型コロナ感染症に対応する「野戦病院」(臨時の医療施設)を増やす考えを示すとともに、軽症~中等症の新型コロナ患者に使用する中和抗体薬「ロナプリーブ点滴静注セット」(一般名:カシリビマブ・イムデビマブ)を入院患者だけでなく外来患者にも使用できるようにする方針を示した。
菅首相は、中和抗体薬ロナプリーブによる抗体カクテル療法について「1万人以上に実施し、効果がすこぶる高く出ているという報告を受けている」と効果の高さをあらためて強調。「ワクチン接種はデルタ株に対しても明らかな効果があり、新たな治療薬(=中和抗体薬)で広く重症化を防ぐことも可能。明かりははっきりと見え始めている」と希望を語った。
臨時医療施設の増設と中和抗体薬の対象拡大に関して厚生労働省は同日付で関係通知(事務連絡)を全国に送付。
特措法に基づく臨時の医療施設については、自治体の先行事例(下表)を示しながら「積極的かつ速やかな検討」を各自治体に求め、特に感染拡大地域に対し「設置に向けた具体的な調整」を開始するよう要請した。
中和抗体薬については、Q&A(質疑応答集)を盛り込んだ事務連絡を改正し、新たに①新型コロナ感染症の入院治療を行う医療機関(臨時の医療施設を含む)の外来での投与、②宿泊療養施設や入院待機施設での往診・訪問診療による投与―を可能とする見解を示した。
野戦病院については日本医師会の中川俊男会長が8月18日の記者会見で、「大規模イベント会場、体育館、ドーム型の運動施設」などを特措法に基づく臨時の医療施設とし、中和抗体薬の投与などを可能にすべきと訴えていた。
特措法に基づく臨時の医療施設の先行事例
〇湘南鎌倉総合病院隣接施設(神奈川県):プレハブ病棟5棟・180床、管理棟4棟
〇千葉県臨時医療施設(千葉県):66床(稼働病床数48床)、医師4人・看護師48人
〇品川プリンスホテル イーストタワー(東京都):抗体カクテル療法を実施するため1フロア(60室)を活用
〇都民の城(東京都):軽症者等を一時的に受け入れ、酸素投与等を行う「酸素ステーション」として設置(130床)
【関連情報】
現下の感染急拡大を踏まえた臨時の医療施設の設置の推進について(8月25日付厚生労働省事務連絡)
中和抗体薬(カシリビマブ・イムデビマブ)に関する質疑応答集(Q&A)(7月20日付厚生労働省事務連絡(8月13日、8月18日、8月25日一部改正))
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