急性腎炎症候群は,急激に発症する血尿,蛋白尿,高血圧,糸球体濾過量の低下,Naと水の貯留を特徴とする疾患群である。感染症に続発するものが多く,小児では,溶連菌感染症後急性糸球体腎炎(post-streptococcal acute glomerulonephritis:PSAGN)が,その代表疾患である。本稿ではPSAGNについて解説する。
PSAGNは,A群β溶血性連鎖球菌(group A β-hemolytic Streptococci)による咽頭炎から1~2週間後,皮膚感染症から3~6週間後に,突然の血尿,浮腫,高血圧で発症する。好発年齢は3~12歳で,男児に多い。小児では,ほとんどの症例で後遺症を残さずに治癒する予後良好な疾患である。
血尿,浮腫,高血圧が3主徴であり,肉眼的血尿や浮腫を契機に診断される例が多い。一方で,尿所見が乏しく,高血圧に伴う中枢神経症状(頭痛,痙攣,意識障害,視覚障害など)や,心不全で発症する例もあるため,注意が必要である1)。
血尿(顕微鏡的血尿あるいは肉眼的血尿)は,ほぼ全例で認める。蛋白尿を伴うことが多いが,ネフローゼ症候群は2~4%と稀である2)。急性期には,BUN,Creの上昇,糸球体濾過量の低下や,体液量増加に伴う希釈性の貧血を認めることがある。血清補体価およびC3は低下するが,発症から6~8週間で正常化する。
先行する溶連菌感染症の評価に,咽頭炎では抗ストレプトリジンO抗体(ASO),抗ストレプトキナーゼ抗体(ASK),皮膚感染症では抗DNase Bの測定が有用である。
特異的治療はなく,高血圧と浮腫に対する支持療法が中心である。原則入院管理で,高血圧を伴う場合はベッド上安静とする。体重,尿量,血圧をモニタリングするとともに,超音波検査による下大静脈径,呼吸性変動の有無や,胸部X線写真による心胸郭比などを参考に,体液量の評価を行う。乏尿期は水分・塩分制限を行い,病状に応じて利尿薬や降圧薬を投与する。
溶連菌感染症が持続している場合は,治療と周囲への感染予防のために,抗菌薬を投与する。
残り1,140文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する