社会保障審議会医療部会は11月2日、2022年度診療報酬改定の基本方針について議論した。厚生労働省はこの中で、改定の基本的視点のうち、「新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築」、「安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等の推進」の2項目を重点課題とすることを提案し、大筋で了承された。先月下旬に開かれた医療保険部会でも、これらの重点課題化は了承済み。次回は、これまでの両部会での意見を踏まえて、加筆・修正した案をもとに、さらに議論を深める。
改定の基本方針は、▶改定に当たっての基本認識、▶改定の基本的視点、▶基本的視点の各項目について、考えられる具体的方向性の例―で構成される。改定の基本的視点は当初、5項目だったが、新型コロナに対応できる医療提供体制の構築と、医療機能の分化・強化・連携などに関する項目について、内容が重複しているとの指摘があったため、統合して4項目にまとめた。
重点課題に位置づけられた新型コロナに対応できる医療提供体制の構築では、今般の感染拡大により、局所的な病床・人材不足、医療機関間の役割分担・連携体制の構築などの課題が浮き彫りになるとともに、かかりつけ医を中心とした外来医療や在宅医療の重要性が再認識されたと指摘。一方で、人口減少や高齢化に対応した医療機能の分化・連携の取組が待ったなしであることも示した。その上で、考えられる具体的方向性の例には、▶新興感染症等に対応できる医療提供体制の構築に向けた取組、▶外来医療の機能分化等、▶かかりつけ医の機能の評価、▶質の高い在宅医療・訪問看護の確保―などを挙げた。
もう1つの重点課題である医師等の働き方改革では、次回改定が医師の時間外労働上限規制導入(24年4月)を前にした実質、最後の改定になるとし、▶医療従事者が高い専門性を発揮できる労務環境改善に向けての取組の評価、▶救急医療体制の確保、▶業務の効率化に資するICTの利活用の推進―などを具体的方向性の例として示した。
新型コロナに対応できる医療提供体制の構築で、神野正博委員(全日本病院協会副会長)は、病床の確保支援を診療報酬だけで行うという誤解を与えないためにも、補助金による支援も併せて行うことも書き込むべきだと指摘。島崎謙治委員(国際医療福祉大学大学院教授)は、重点課題とした2項目について、「医療政策の重点事項だから診療報酬で評価するという単純な議論では国民の理解は得られない」との認識を表明。中央社会保険医療協議会で具体策を検討する際には、診療報酬の評価引き上げが患者負担の増加に直結することを十分考慮する必要があると述べた。