「救急診療」は幅広い。軽症多数の一次救急から、救急搬送・重症の三次救急。どちらも重要だが、一次救急こそ紛れ込む重症を見抜く診療能力が問われる。
富士救急医療センター(以下、富士救)夜勤。できる検査は血算・CRP・X線・EKG・超音波のみ。問診・診察能力だけで戦う、孤独な一次救急の一夜である。そこでの症例。
45歳、男性。「飲みすぎて吐いている患者が妻の車で来院」との情報で車に向かう。
後部座席でうずくまり唸っている患者。問診力が強烈な威力を発揮する。
私「今日は普段になく飲みましたか?」
妻・本人「いいえ、いつもと同じです」
意識レベルはGCS E3V5M6。
私「いつもはビール?焼酎?日本酒?どれを何杯くらいですか?」
妻「いつも缶チューハイ2本です」
私「いつから具合悪くなりました?」
妻「今日もいつも通り2本飲んで、寝ようとしていたら、急に吐いて唸りだして」
私の背中を冷や汗が伝う。
私「頭も痛いですか?」
本人「……(うなりながら)はい」
私「突然『ガン』って痛くなりました?」
本人「……はい」
私「何かした時ですか?」
本人「トイレで立ったら『ガン!』って」
Thunderclap headache(突然発症・雷鳴頭痛)確定である。ここまで所要時間3分。
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