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顎関節症[私の治療]

No.5092 (2021年11月27日発行) P.47

吉田秀児 (東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座)

登録日: 2021-11-26

最終更新日: 2021-11-22

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  • 顎関節症とは,顎関節部の関節(雑)音,顎関節や咀嚼筋の疼痛,それに伴う開口障害や顎運動異常を主要症候とする障害の包括的診断名である。その病態は,咀嚼筋痛障害,顎関節痛障害,顎関節円板障害および変形性顎関節症である。また,顎関節の疼痛については,耳・頭蓋顎顔面にも放散することから,頭痛,顔面痛などの慢性疼痛障害の中の口腔顔面痛機能障害のひとつとして位置づけられている。
    発症メカニズムは不明なことが多いが,日常生活を含めた環境因子・行動因子・宿主因子・時間的因子などの多因子により,個体の耐性を超えた場合に発症するとされている。

    ▶診断のポイント

    【症状】
    〈咀嚼筋痛障害:Ⅰ型〉

    咀嚼筋痛とそれによる機能障害を主徴候とするのがⅠ型となる。主症状としては筋痛,運動痛,顎運動障害である。咀嚼筋障害の主な病態は,局所筋痛と筋・筋膜痛である。特に筋・筋膜痛が重要であり,発生には,末梢の筋内における侵害受容機構,中枢による疼痛感受機構,痛みに対する対処能力が関連すると言われている。

    〈顎関節痛障害:Ⅱ型〉

    顎関節痛とそれによる機能障害を主徴候とするのがⅡ型となる。顎関節円板障害,変形性顎関節症,内在性外傷などが原因となる。主な病変部位は,滑膜,円板後部組織,関節靱帯,関節包であり,それらの炎症や損傷によって生じる。

    〈顎関節円板障害:Ⅲ型〉

    関節円板の位置異常ならびに形態異常に継発する関節構成体の機能的ないし器質的障害がⅢ型となる。主病変部位は関節円板と滑膜で,関節円板の転位,変性,穿孔,線維化により生じる。開口時に関節円板が復位するものをⅢa型(復位性関節円板前方転位),復位しないものをⅢb型(非復位性関節円板前方転位)とする。Ⅲa型は円板を乗り越えるときにクリック音(顎関節部のコクッとする音)を自覚し,Ⅲb型は円板を乗り越えられないため開口障害を生じるクローズドロックを自覚する。

    〈変形性顎関節症:Ⅳ型〉

    退行性病変を主徴候とした病態で,主な病変部位は関節軟骨,関節円板,滑膜,下顎頭,下顎窩である。それらの病理変化は軟骨破壊,肉芽形成,骨吸収,骨添加である。臨床症状として関節雑音(特にクレピタス:シャリシャリとした音),顎運動障害,顎関節部の痛み(運動痛,圧痛)のうちいずれか1つ以上の症状を認める。

    【検査所見】

    顎関節症はまず問診にて,関節痛,開口障害,関節雑音の確認を行う。また,触診にて顎関節部の雑音や咀嚼筋の圧痛の確認をして,ある程度の症型分類に応じた検査をオーダーする。Ⅲ型の場合,顎関節造影,MRI,顎関節内視鏡検査により診断が可能で,Ⅳ型の場合,パノラマX線画像や顎関節パノラマX線画像で診断が可能である。臨床上,各型の合併例や心理的要因も関係していることが多く,画像検査だけでは最終的な診断は困難であり,臨床症状と統合した診断が必要となる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    顎関節症の治療は症状を消失することで,顎機能を回復させADLを改善することを目標とする。重要なことは疼痛の寛解である。Ⅲ型のように円板が転位していて治療により復位が改善しなくても十分な開口量が得られればよい。また,開口量が不十分であってもADLに問題なければよいとする。手術は治癒よりも寛解が目標となることが多く,顎関節の過負荷を避け,咬合を安定させ,行動様式を変更させて自己管理させる術後管理が必要である。

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