日常臨床で経験する腹痛における超音波所見や鑑別すべき疾患について、内視鏡像・病理写真を対比して示すとともに、超音波による包括的なアプローチについても述べられている(春間 賢 編、畠 二郎、他著、医学書院、2004年刊)
私は大学病院で消化器内視鏡医として勤務後、胃腸科クリニックを開院しました。開業して感じたことは、内視鏡は腹痛原因の究明にそれほど役に立たないことです。腹痛患者は私にとって憂鬱の種で、診察所見から虫垂炎と診断し病院に紹介しても、CTにて腸炎と診断されることもしばしば経験しました。患者には「お腹の中はブラックボックスだから、私には正確な腹痛の原因はわかりません」と説明するのが口癖となりました。
そんなある日、畠 二郎先生の連載を読み、消化管超音波こそ私が求めていたものだ、これを習得すれば正確な腹痛診療が可能となると悟りました。そして『消化管超音波診断ビジュアルテキスト』をバイブルとし、学んだことを実際の診療で実践し続けました。その結果、現在では腹痛診療が楽しい仕事に変わりました。もちろん、超音波検査でも原因が判明しないことはありますが、重要な疾患を鑑別することができれば、症状を鑑みて自信を持って経過観察を行うことができます。患者にも説得力のある腹痛の原因説明ができるようになりました。
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