7歳の頃、満州から引き揚げた自らの体験をもとに、人間の壮絶な極限状態を描いた一冊(遠藤 誉著、読売新聞社、1984年刊)
「ギフトールという薬、知ってますか?」と、突然電話が入った。「松ヤニを主原料としていて、薬物の依存なのか離脱なのか、とにかく効くらしいんですよ。その成分がわからないんですよ」。それは『卡子(チャーズ)』という本に出ているという。早速、ネットで購入し読んでみた。
「ギフトール」とは、著者の父親が発明した「麻薬中毒患者を治療する薬」であり、「Gift(ドイツ語で毒のこと)を取る」から命名されたという。
ところが、この本、「ギフトール」どころではないのである。舞台は引き揚げが終わった後の旧満州・長春である。八路軍と国民党軍による国共内戦の激化の中で、八路軍が長春を完全包囲し、国民党軍と長春市民とを「兵糧攻め」にしたという。
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