この時期によくみられるのが低温による皮膚障害です。凍瘡はいわゆるしもやけのことですが、皮膚の温度低下や湿度上昇に伴う静脈性の末梢循環障害です。皮膚が暗赤色調に腫脹し、滲出性の紅斑が見られます。かゆみや痛みを伴いますが、重症化すると水泡、びらんや潰瘍形成が生じます。
一方、凍傷は氷点以下の環境に暴露されることで、四肢末梢などの組織が障害されます。深度によって重症度分類がされますが、第Ⅳ度凍傷では組織の壊死を伴い、切断が必要になります。
前者の凍瘡は一般的であり、家事を行う主婦や冬季に屋外で作業する方など多くの人が罹患します。あまりによく知られているが故、近年の有病率は不明です。
さて、私は未成年者が生活している施設で健康管理を行っています。そこで、冬季に凍瘡が多く発生していることに気づきました。その施設はコンクリート製ですが建立から長期間を経ていますので、冬季には室温が低下します。気象庁の資料からその地区の平均気温を調べたところ、12月で8.1度、1月で4.8度、2月で5.1度でした。
ある年に凍瘡の発生率を調べたところ、手の凍瘡で31.3%、足の凍瘡で40.3%でした。日常生活でしっかり手を拭くことや、手足のマッサージなどを行うように指導していましたが、痛みやかゆみ症状が強い患者さんや、びらんがみられる患者さんもいました。そこで、必要に応じて外用薬の処方を行い、患者1人当たり3カ月間でヘパリン類似物質の処方量は70g、ゲンタマイシン硫酸塩の処方量は2gとなりました。
なんとか凍瘡を予防しようと、室内で生活する際には普通の靴下と厚手の靴下を2重にし、さらにレッグウォーマーを使用すること、水仕事を行う際に手袋を積極的に使用することを推進しました。また、足凍瘡の初期症状が出現した人には、就寝時に発熱ソックスなどを使用しました。
そのような取り組みを2年間行った後に、再度発生率や薬剤の処方量を調査しました。その結果、手凍瘡の発生率は24.5%とやや減少しましたが、足凍瘡の発生率に変化はありませんでした。しかし、症状全体は軽快しており、患者1人当たり3カ月間のヘパリン類似物質の処方量は30gと有意に減少しており、ゲンタマイシン硫酸塩の処方はありませんでした。
わが国では、老朽化した施設が多く、冬季に室温保持が困難な環境も多いと思います。特に、日常生活で水仕事を多く行う人は、様々な工夫で四肢の保温を行うことや、乾燥を心掛ける必要があります。そして、日頃から凍瘡予防に向けた理学的処置を行うことが重要です。
今回、凍瘡の発生を予防することは困難でしたが、入所者の生活をサポートする人々の工夫で、施設入所者の凍瘡の重症度軽減は可能になりました。
現代においても、多くの人がしもやけに悩まされています。先生方の適切なアドバイスを待つ方は多いようです。