No.5098 (2022年01月08日発行) P.57
和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
登録日: 2021-12-22
最終更新日: 2021-12-22
オミクロン株を「国内に流入させないため」に、検疫での対応を強化している。飛行機内で感染者が1名確認されたら、同乗者の全員を濃厚接触者として施設などでの待機としている。
航空機内で感染が広がった事例の報告はあるものの、基本的には空気の循環も良く、従来は、濃厚接触者としても前後の近隣の方だけだったことから今回は「特例的に」拡大したことになる。さらに、入国者数の制限や流行が拡大された国や地域から到着した人を宿泊施設に待機していただいて検査するなど、これまで以上に強い行動の制限をお願いしている。
ある意味、「最初にこのような対策のボタンを掛けた」のである。この意思決定をされた方がその後のボタンの掛け方をどこまで想定していたのかはわからない。
海外からの渡航者でも、対象国からではなく、到着時に陰性であれば自宅で待機している方も多い。自宅で待機中に症状が出て、検査を受けたらオミクロン株とわかった事例も報告されている。ワクチン接種もされていると、症状もきわめて軽くなっている方も一定数おり、そのような場合には相談がしづらくなってはいないか。
どこの自治体も市中感染確認の最初の例になりたくないと思っているのではないか。全国で同時多発的に確認されると特定の自治体は注目されないが、そうでないと、しばらくその自治体が注目される。これも、検査が遅れたり、また気づかない間に感染を広げることにつながりえる。
さて、今後の対策のボタンをどう掛けていくか。
まずは、「感染者と同じ飛行機に搭乗した『全員』を濃厚接触者とすることを縮小する」「対象国からの滞在者の待機を縮小する」ということを、国内の市中感染の確認とともにどう進めていくのか。そして市中感染の確認初期に、どのように濃厚接触者や感染者に対応するのかを決めておかなければならない。コロナ対策の限られた資源の配分をどう迅速にそして状況に合わせて行っていくのか。ここからが本番である。
最初のボタンはだいぶ無理をしてかけている。徐々にその「掛け違い」が明らかになってくることを危惧している。今一度、市中感染が確認された際にどう対応をしていくのかといったことも市民にこの時間稼ぎの間に伝えておきたい。
昨年の年末もそうであったが、この年末年始に混乱ができるだけ起こらないように残りの数日を大事にしておきたいのだが。
和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]