高齢者にどこまで積極的治療を行うか?
大学病院勤務から開業医になったとき、一番戸惑ったのが超高齢者である。大学病院で紹介中心の心不全外来を約10年行っていたが、90歳以上の患者を診たことがなく、どこまで積極的な治療を行うか躊躇した。日本では、約8万637人の100歳以上の高齢者が存在する(住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数、令和3年1月1日現在)。この方々をセンテナリアンという。ここまで健康に生活を送ってみえた方に、どれだけの侵襲的なアプローチをすべきかという、一種の哲学のようなことをぼんやり考えていた。
ある朝の外来中、高血圧症にて通院してみえる99歳の男性が胸痛で来院された。心電図(図)をみると、前胸部誘導にてST-Tの上昇を伴う左室下降枝近位部の心筋梗塞が疑われた。胸痛があるため近隣の病院に救急搬送した。20分後、病診連携の救急担当の後輩から電話が入り、侵襲的な治療をしたほうがいいかと問い合わせがあった。腎機能も少し低下しており、高齢であるため、冠動脈インターベンションに消極的なニュアンスを感じた。しかし、2週間前ご自宅から歩いて通院されて、それまでも元気で過ごされた方であるため、必要なら冠動脈にステントを留置して、後は在宅で診るからできれば1週間で退院させて欲しい旨を伝え了承を得た。
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