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膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)[私の治療]

No.5099 (2022年01月15日発行) P.43

大塚隆生 (鹿児島大学大学院医歯学総合研究科消化器・乳腺甲状腺外科学教授)

登録日: 2022-01-17

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  • 膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm of the pancreas:IPMN)は高齢の男性に多く,粘液過剰産生による膵管拡張を形態的特徴とし,分枝型,主膵管型,混合型に分類される。多くは良性のまま経過するが,一部は腺腫から非浸潤癌,浸潤癌へ緩徐に進行する。また,年率約1%の頻度で通常型膵癌が同一膵内に発生するため,膵癌のリスク因子としても知られている。

    ▶診断のポイント

    診断はCT,MRI/MRCP,超音波内視鏡による画像評価が中心で,ERCP/膵液細胞診や超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診/組織診が行われる頻度は低い。「IPMN国際診療ガイドライン2017年版」1) に示されている「悪性を強く疑う所見」(high risk stigmata:HRS)と「悪性の可能性を念頭に置く所見」(worrisome features:WF)を参考に,切除あるいは非切除で経過観察のいずれを選択するかを決定する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    HRSとWFは「悪性を疑う所見」であり,「切除適応所見」ではないことを認識しておく。したがって,どれだけがんを疑うかの情報を患者とも共有して治療方針を決める。HRSの中でも黄疸と高さ10mm以上の壁在結節の存在は悪性の可能性を強く示唆する。

    非切除で経過観察の例では併存膵癌発症の可能性も考慮して,半年ごとに何らかの画像診断と採血検査(CA19-9とHbA1c)を行っている。特にCTは膵病変だけでなく,IPMN患者に多い他臓器癌合併のスクリーニングも兼ねて毎年1回は実施している。MRCPは膵管やIPMNの全体像把握に優れ,わずかな主膵管の変化(狭窄や拡張)が早期の併存膵癌診断につながることもある。IPMN自体の進行は緩徐であり,たとえ進行しても半年で切除の機会を失う可能性は低いと考えている。IPMNに対する膵部分切除後には残膵に異時性多発病変(併存膵癌も含む)の発生リスクが残るため,術後経過観察も非切除例と同様の方法で行う。

    切除例の術式決定に際しては,良・悪性のどちらをより疑うか,悪性の場合の進行度,主膵管内進展範囲,膵内多発病変の有無(併存膵癌を含む)などを考慮しつつ,膵機能温存と根治性のバランスにも配慮する。一般的に,分枝型では併存膵癌の有無を,主膵管型/混合型では主膵管内進展範囲を適切に診断できるかがポイントで,術中膵切除断端の迅速組織診も適宜活用するが,低異型度病変(腺腫)の遺残は許容される。分枝型に対する膵部分切除術後の残膵に併存膵癌が,主膵管型/混合型の切除後には膵管内播種病変が異時性に発生することがあるが,定期的な術後経過観察で切除可能病変として診断されることも多く,初回手術時に予防的膵全摘を行うことは推奨されていない。また,IPMNに対する膵切除は低侵襲な鏡視下手術で行われることが多い。

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