私の外科医としての座右の銘は「折れない心」である。どんなに技術や知識があっても、心が折れてしまうと何の役にも立たない。
腹腔鏡下直腸癌手術は私のライフワークと言える。開腹手術では狭い骨盤の中は暗くてよく見えなかったが、腹腔鏡は明るく拡大された良好な視野を与えてくれた。実際の手術は、お腹の中の剝離操作はすべて腹腔鏡下に行い、がんを取り出す時だけ約4cmの小開腹をおく。そしてがんを切除し、口側の腸に自動吻合器用の器具を装着するのだが、その際最も重要なことは口側の腸管の血流を維持することである。
写真はある患者さんの直腸癌切除検体だが、2つのうち下の腸は本来切除しなくてもよかった部分である。それならなぜ切除したのか?
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