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ありがとう浜村淳さん[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(389)]

No.5100 (2022年01月22日発行) P.69

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2022-01-19

最終更新日: 2022-01-18

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「ありがとう浜村淳です」というMBSラジオの番組がある。大阪では超有名だが、関西ローカルなので全国的な知名度はあまり高くないかもしれない。しかし、日曜日を除く毎朝、40年近くもの間つづいているギネス級のものすごい番組なのである。

大晦日に、この番組にお呼びいただき、拙著『笑う門には病なし』を巡る雑談をさせてもらった。いつか浜村さんにお目にかかりたいと思っていたので、12~3分だったけれど、本当に楽しく、それ以上に嬉しかった。

中高生のころ「ヒットでヒットバチョンといこう」という深夜ラジオ番組があった。木曜日のディスクジョッキーが浜村さんで、毎週楽しみに聞いていた。浜村さんといえば映画の解説だ。何しろ、映画を見る以上に面白いと噂されるほどの名解説なのである。

「小さな恋のメロディー」や「ポセイドン・アドベンチャー」などの紹介は、今でも覚えている。なかでも一番は、ブルース・リーが繰り出すワザを「真空急降下直角三段蹴り」とか「必殺飛燕一文字五段蹴り」などと勝手に名付けて解説された「燃えよドラゴン」だ。その熱すぎる語り調子に何しろ興奮した。

映画と並んで本の紹介もよくしておられた。そこで紹介されて、わたしが読んだ初めてのノンフィクションが、忘れもしない、連続航空機事故を扱った柳田邦男の『マッハの恐怖』である。むちゃくちゃ面白かった。

「浜村さんのおかげで洋画を見るようになり、ノンフィクションを読むようになりました。浜村さんの番組がなかったら、私の人生は違ったものになっていたかもしれません」。収録が終わってから、そうお礼を申し上げることができた。なんだか人生の宿題をひとつ終えたような感じすらした。

『さてみなさん聞いて下さい 浜村淳ラジオ話芸』という20年近く前に出版された浜村さんの本を持参してサインをお願いした。筆ペンで「仲野徹様 あしたはもっと青い空 浜村淳」と書いてくださった。

こういった楽観性が、半世紀近くもの間、番組を続けてこられた秘訣なのだろう。さすがにお歳は召されたが、86歳になられるとは思えない若々しさだった。打ち合わせゼロのぶっつけ本番だったけれど、じつにスムーズに話させてもらえたのにも驚いた。名人というのはこういうものなのだろう。

いやぁ、これほどウキウキしたことは近年にありません、と断言できますわ。

なかののつぶやき
「浜村淳さんの番組と同じ時期、水曜日には、他局の『ABCヤングリクエスト』という番組を聞いていました。そのディスクジョッキーは道上洋三アナと桜井一枝さん。ご病気で引退されましたが、道上アナの朝の帯番組にも出演させてもらったことがあり、その時もむっちゃ嬉しかったのであります。そして、今回の浜村さんの番組のアシスタントはなんと桜井さん!幸福度が倍加したことはいうまでもありません。いやぁ、長生きはするもんですわ」

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