私は外科医である。手術で患者の命を救うこと、quality of lifeを取り戻すことを第一に考えている。質の高い手術を実現するための技術、そして最先端の知識を備えておくことは、外科医として当たり前の心構えであろう。しかし、想像を超える事態が起こることがある。時には見えるはずのないものが見えることもあるかもしれない。
見えないはずのものが見えた経験をした。
強心薬を中止できずに退院することができない最重症型の心不全を患うA氏は、植込型補助人工心臓の装着手術を受けた。2011年に国内で使用可能となった植込型補助人工心臓は、今や重症心不全治療の一翼を担う役割を果たしており、もはや“夢の治療”や“未来の治療”ではなくなっている。この植込型補助人工心臓を装着したことで、A氏は自宅に退院することができ、quality of lifeを取り戻すことができた。しかし、装着から約1年後に突然の下血をきたし、A氏は緊急で大腸内視鏡検査(写真)を受けた。
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