肝血管腫:肝良性腫瘍では最も多く,0.4~20.0%と報告されている。妊娠や経口避妊薬の関与は証明されていないが,男女比は1:1.2~6.0と女性に多い。ほとんど無症状で,症状を呈するのは11~14%程度である。巨大血管腫ではKasabach-Merritt syndrome(KMS)を合併することもある。
限局性結節性過形成:肝血管腫についで2番目に多い肝良性腫瘍で,成人の約0.4~3.0%に認める。血管奇形に起因する肝細胞の過形成を呈する。成因として経口避妊薬の関与は証明されていない。
肝細胞腺腫:頻度は0.0010~0.0004%と稀で,35~40歳前後の若年女性に多い。従来,経口避妊薬との関連が指摘されているが,近年では糖原病(Ⅰa,Ⅲ)や肥満,メタボリックシンドローム関連疾患(糖尿病,高血圧など)との関連も示唆されている1)2)。腫瘍出血を合併する例が多い。近年,遺伝子型により,①hepatocyte nuclear factor 1α(HNF-1α) inactivated type(30~40%),②β-catenin activated type(10~20%),③inflammatory type(40~55%),④unclassified type(5~10%)に分類され2),これらの4病型にはそれぞれ異なった性差や特徴的臨床所見が認められる。β-catenin activated typeは男性例に多く,悪性化のリスクが高い。
American College of Gastroenterology(ACG)のガイドライン1)は確定診断にCT,MRIを推奨し,MRIのT2強調像でのhigh intensity所見,造影では腫瘍辺縁から中心部へのfill in所見や後期相での濃染持続が典型的所見である。造影超音波検査(CEUS)は診断能が向上するので,可能なら追加することが望ましいとしている。欧州肝臓病学会(EASL)では背景が正常肝,3cm未満,高エコー病変という典型的所見を有する場合は超音波検査のみで十分診断できるとしている2)。ただし,担癌患者や慢性肝疾患例では,造影検査(CEUS,CT,MRI)を推奨している。出血のリスクがあるので,生検は避けるべきである1)。
3cm超の例では造影MRIでほぼ確定診断できるが,3cm未満であればCEUSを組み合わせて診断することが推奨される。中心性瘢痕,車軸状の造影所見が重要で,EOB-MRI (gadoxetic acid-enhanced magnetic resonance imaging)の肝細胞相ではiso~high intensityを呈する2)。典型的所見を認めない場合には組織学的診断を考慮し,増大する場合は肝細胞癌など他疾患を疑う。
造影検査では動脈早期相で腫瘍全体が均一に濃染し,門脈相で通常iso densityとなる(稀にlow density)。腫瘍内出血を伴う例ではCTでhigh densityを呈する。生検組織における免疫染色によって前述の遺伝子型を決定することは日常臨床では推奨されておらず,画像検査所見の特徴はEASLのガイダンス2)を参考にして頂きたい。
残り911文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する