株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

慢性歯周炎[私の治療]

No.5102 (2022年02月05日発行) P.48

恩田健志 (東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座講師)

登録日: 2022-02-04

最終更新日: 2022-02-01

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 歯周病は歯周組織に発症し,歯周組織を破壊する疾患の総称で,歯肉炎,歯周炎,咬合性外傷等がある。
    歯肉炎は炎症が歯肉に限局し,下層の歯槽骨の破壊を伴わないが,歯周炎は歯肉,歯根膜,歯槽骨まで波及し,歯槽骨の破壊吸収が生じる。最終的には歯の強度動揺から歯の脱落に至り,咀嚼障害,発音障害,審美障害をきたす。リスクファクターは細菌因子に加えて,宿主因子,環境因子が挙げられ,多因子性疾患である。
    歯周炎と全身疾患とは密接な関連があり,糖尿病,骨粗鬆症,白血病,免疫疾患等の全身疾患が歯周炎を進行させる。また,歯周炎が心筋梗塞などの心血管疾患,誤嚥性肺炎,低体重児出産・早産,糖尿病などの全身疾患の進行を促進させる。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    歯肉炎では歯肉の腫脹,発赤,出血がみられる。進行して歯周炎になると歯周ポケットの形成,付着の喪失(アタッチメントロス),歯槽骨の吸収がみられる。歯肉の退縮や増殖を認めることもある。病状が進行すると歯周ポケットからの排膿,口臭,歯の動揺などをきたす。

    【検査所見】

    歯周組織検査所見として,4mm以上の歯周ポケットの形成,歯肉からの出血,進行すると歯の動揺がみられる。画像所見として, 歯科用デンタルX線写真およびパノラマX線写真上で歯槽骨の吸収が認められる。細菌学的所見として,Porphyromonas gingivalis,Tannerella forsythia,Aggregatibacter actinomycetemcomitans,Fusobacterium nucleatumおよびTreponema denticola等が歯周炎の活動部位に多く検出される。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    歯周治療の第一は歯周病を引き起こす原因の除去であり,この段階の治療を歯周基本治療と呼ぶ。患者のブラッシングによるセルフケアに加えて,歯科医師,歯科衛生士によるプロフェッショナルケアによりプラークコントロールを行う。さらにスケーリング•ルートプレーニングを行い,プラークおよび歯石を除去し,病的セメント質の一層除去により,炎症・歯周ポケットの改善を図る。

    歯周治療の第二は歯周組織の再生であり,歯周外科治療により再生を図る。歯周炎により根尖側に移動したアタッチメントレベルを歯冠側に移動するアタッチメントゲインと骨吸収により生じた歯槽骨欠損部のセメント質形成を伴う骨新生をめざす。
    歯周治療の第三は咬合・咀嚼機能の回復であり,これを口腔機能回復治療と呼ぶ。歯槽骨吸収により生じた動揺歯の固定や重度歯周炎により失われた欠損部の補綴治療を行う。

    歯周治療の第四は口腔内の健康維持であり,これをメインテナンスと呼ぶ。また,一部歯周病が残った場合の治療を,サポーティブ・ペリオドンタルセラピー(SPT)と言う。歯周基本治療,歯周外科治療,口腔機能回復治療により,健康あるいは安定となった歯周組織における歯周病の再発進行を防止し,健康を維持する。

    残り1,289文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    関連物件情報

    もっと見る

    page top