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なんと糞線虫症があったとは(大西健児)[プラタナス]

No.5102 (2022年02月05日発行) P.3

大西健児 (鈴鹿医療科学大学看護学部教授)

登録日: 2022-02-05

最終更新日: 2022-02-02

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  • 今から20年くらい前の話である。日本滞在歴が4年前後となる40歳代のタイ人女性が、肺炎で前医へ入院した。抗菌薬の投与を受けたが改善せず、さらにHIV陽性が判明したため、以前私が勤務していた病院の感染症科へ転院した。転院時は身長153cm、体重45kg。口腔カンジダを認め、呼吸数40/分、SpO2 82%(室内気)、血液検査でWBC 10800/μL(Ne 96%、Ly 2.6%、Mo 1.0%、Eo 0.4%)、LDH 782U/Lであった。また、HIV-RNAは15×104copies/μL、CD4数が3/μL、胸部CT所見からはニューモシスティス肺炎(PCP)が疑われた。なお、悪心・嘔吐、腹痛はないが、発症日が不明の非血性軽度軟便が続いているとのことであった(排便回数は1~3回/日)。

    PCPと口腔カンジダ症を発症したHIV感染者(後天性免疫不全症候群)と考え、Pneumocystis jiroveciを検出する目的で病理に痰を提出し、転院当日からST合剤とステロイド、抗真菌薬による治療を開始した。その後、病理の担当者から、痰中にP. jiroveciが認められるが、それ以外に寄生虫のようなものが見えると連絡があった。標本を見に行くと、ラブジチス型(R型)あるいはR型からフィラリア型(F型)へ移行する段階のようにみえる線虫の幼虫と虫卵が、痰の標本中に散見された。慌てて便を直接塗抹法で観察したところ、多数のR型幼虫を認めた(写真)。

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