私は便秘や過敏性腸症候群など、機能性腸疾患の診察を専門としています。便秘も過敏性腸症候群もストレスの影響が大きな疾患です。ストレス関連病態では、症状を悩めば悩むほど、それがストレスとなって悪循環をきたします。
今から5年前、精神科受診中の「ちょっと」神経質な便秘の50代の男性患者さんがいました。便回数と便量が少なく、毎日下剤を飲んで何とか排便しており、旅行中は排便がないタイプで、最高20日排便がないとのことでした。
来院前日は下剤を飲まないように指示しているのですが、腹部X線をみると便もガスもほとんどありません。患者さんは「おっかしいな、下剤を飲んでいないのにすっきり出ちゃったんですよね」と不思議な顔をしています。
「旅行中排便がない“痙攣性便秘”の人は、たいてい受診日に排便があるんですよ。だって、悪くなると思って受診しないでしょ?」と説明すると、表情がパッと明るくなり、「そうだったんだ、心配しなくてよかったんですね!」と喜んで帰っていきました。結局、受診したのは初診時のその1回だけでした。
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