非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)の診断概念は,2020年のガイドラインでは「NAFLDは,主にメタボリックシンドロームに関連する諸因子とともに,組織診断あるいは画像診断にて脂肪肝を認めた病態である。アルコール性肝障害,ウイルス性肝疾患,薬物性肝障害など他の肝疾患は除外する」となっている。
NAFLDは,病態がほとんど進行しない非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver:NAFL,以前の単純性脂肪肝)と,進行性で肝硬変や肝癌の発症母地にもなる非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)に分類される。
腹部超音波検査等で脂肪肝を認めた場合,薬剤摂取歴・飲酒歴・ウイルスマーカー・自己抗体・画像検査より他の肝疾患を除外し,NAFLDの診断を行う。飲酒歴は,男性でエタノール換算30g/日,女性でエタノール換算20g/日未満とし,十分な聴取が必要である。またNAFLDの予後には,肝臓の線維化の有無が最も重症である。このため肝線維化(血小板20万未満,FIB 4 index 1.3以上,線維化マーカーの上昇のいずれかを認める場合)が疑われる場合,エラストグラフィー(transient elastography, MR elastographyなど)または肝生検を行い,肝臓の線維化を把握し,follow up,治療につなげるべきである。
NAFLDは生命予後が低下するため,NAFLD全体を治療対象とすることが大切である。治療の基本は減量と食事・運動療法,生活習慣の是正である。しかし,なかなか生活習慣が改善できない例や,NASHは肝硬変に進展し肝細胞癌発生の可能性もあり,積極的な薬物療法(NASHの薬物療法は別稿に譲る)も考慮すべきである。
残り740文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する