1 開発が進むNAFLDの画像診断
・非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)は進行性の非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)を含んでおり,その一部は肝硬変から肝細胞癌へと至る。
・これまで,NAFLD診断は侵襲性の高い肝生検で行われてきた。得られた病理標本から,線維化や脂肪化のみならず,NASHの診断に不可欠な肝内炎症および肝細胞風船様膨化が診断される。しかし,肝生検は出血などの合併症のみならず,サンプリングエラーや病理読影の不一致などの問題も存在する。ゆえに,肝生検に代わる非侵襲的画像診断の開発が進み,日常診療でも応用されてきている。
・NAFLDの画像診断について,その進歩とともに概説する。
2 肝線維化診断
・肝線維化は,NAFLDの予後に最も強く関わる重要な因子である。
・肝臓の硬度を測定することにより,肝線維化を推定することが可能である(エラストグラフィ)。
・エラストグラフィは,超音波を用いたエラストグラフィ(超音波エラストグラフィ)とMRIを用いたエラストグラフィ〔MRエラストグラフィ(MRE)〕にわけられる。
・超音波エラストグラフィの代表的なものとして,vibration-controlled transient elastography(VCTETM,FibroScan®),point shear wave elastography(pSWE),およびtwo-dimensional shear wave elastography(2D-SWE)が挙げられる。
・肝線維化診断能はMREに軍配が上がるが,超音波エラストグラフィは簡便かつ安価というメリットがあるため,状況に合わせた使いわけが重要である。
3 肝脂肪化診断
・肝脂肪化は,NAFLD診断に必須の項目である。
・肝細胞の5%以上への脂肪沈着を「脂肪肝」と定義する。
・通常の超音波やCTでは,肝細胞の30%以上に脂肪蓄積を認めないと診断が困難である。
・超音波の減衰を数値化できるアプリケーションとして,controlled attenuation parameter(CAPTM)が開発され,日常診療で応用されている。さらに近年では,ultrasound-guided attenuation parameter(UGAP)およびattenuation imaging(ATI)が開発され,今後の普及が期待される。
・MRIを用いたproton density fat fraction(PDFF)は肝脂肪定量に最も優れたモダリティであり,治験のエンドポイントとして使用されており,肝脂肪評価のゴールドスタンダードになりつつある。
4 病態進展を伴うNASHの拾い上げにおける非侵襲的診断法
・NAFLDの活動性を反映するNAFLD activity score(NAS)は,肝脂肪化,肝内炎症および肝細胞風船様膨化の合計点数である。
・NAS≧4かつ線維化stage(fibrosis stage)≧2を伴うNASHはprogressive NASH(活動性NASH)とされ,治験を含めた積極的治療介入が必要となる。
・progressive NASH診断で最も頻用されているのはFASTTMスコア(FibroScan®-AST score)である。また,最近ではMRI-AST(MAST)スコアやマルチパラメトリックMRIを用いたcorrected T1もprogressive NASH診断に有用であることが報告された。
・上記を組み合わせることにより,線維化が進行した予後不良の病態,治験のエントリー基準を満たすprogressive NASH診断および治療効果判定が非侵襲的に可能となり,肝生検が不要となる時代がくるかもしれない。