今年10月に予定される看護の処遇改善で厚生労働省(厚労省)は5月19日、対象病院における基本診療料の算定回数や看護職員の配置数などを分析したデータを診療報酬調査専門組織の入院・外来医療等の調査・評価分科会に提出。算定回数、看護職員数とも病院・病棟間でのばらつきが大きいことが明らかになった。
診療報酬による看護の処遇改善は、▶「救急医療管理加算」を算定する年間救急搬送件数200台以上の医療機関、▶三次救急を担う医療機関―を対象に実施する。制度設計を巡る今後の議論では、診療報酬での評価方法に加え、患者数に連動して病院の収入が増減する診療報酬の特性と処遇改善財源の安定的な確保の両立、処遇改善財源の配分における病院間格差の最小化―も重要な論点になる。
厚労省の提出データによると、処遇改善の対象病院における入院料の算定回数は同じ入院料を算定している病院間でもばらつき、初・再診料の算定回数もばらつきが認められた。看護職員の配置状況をみると、対象病院の看護職員全体の約7割が病棟部門に所属。だが、外来や手術室なども含む部門別の実際の看護職員数では病院間のばらつきが目立ち、病床1床当たりで集計した場合でもばらつきがあった。
また、対象病院では診療報酬点数表に掲載されたほぼすべての入院料が算定されていた。このうち最も多いのが全体の約4割が算定する「急性期一般入院料1」、これに「特定機能病院一般病棟7対1入院基本料」、「急性期一般入院料4」などが続く。病棟別の実際の看護職員の配置数は各入院料の配置基準に対応してそれぞれ異なっていたが、同じ入院料を算定する病棟の中でもばらつきがあり、病床1床当たりでもばらつきがみられた。
この日の議論で猪口雄二委員(日本医師会副会長)は、病院間のばらつきの大きさから基本診療料の引き上げや加算といった一律のルールで病院間の格差を縮小するのは難しいと指摘。病院の特性に応じて係数を設定するDPC/PDPSのような方法が望ましいのではないかと述べ、他の複数の委員もこうした見方に賛意を示した。また、委員が共通のイメージを持って議論に臨めるように、具体案をもとにしたシミュレーションを提示することを厚労省に求める声もあがった。