厚生労働省(厚労省)は5月25日の社会保障審議会医療保険部会に、医療機関や薬局における「オンライン資格確認等システム」の導入を2023年4月から原則義務化する案を提示した。保険者は揃って義務化を支持。医療関係者からは導入が難しい施設への配慮や初期費用の全額公費補助などを求める意見があったほか、日本医師会は義務化に強く反対した。
オンライン資格確認等システムは、国が進めるデータヘルス改革の基盤としても活用される。既に医療機関・薬局や患者本人が薬剤情報や特定健診情報を閲覧できる環境が整い、今後も順次対象情報が追加される予定。ところが、全国の医療機関・薬局のうち実際にシステムの運用を開始した施設は5月15日時点でわずか19.0%と、導入は遅々として進んでいないのが実情だ。
国は23年3月末までの全医療機関・薬局へのシステム導入を目標に掲げるが、仮に今年4月の導入ペースのままで推移した場合、23年3月末の導入率は約6割にとどまる見通しだという。このため、厚労省は新たに「22年9月末時点で概ね5割の施設に導入する」ことを中間到達目標に設定。医療機関・薬局とシステム事業者双方への働きかけを強化するなどして導入ペースを加速し、目標の着実な達成に結びつける考えを部会に示した。
こうした取り組みに加え、「更なる対策」として、(1)23年4月から医療機関・薬局におけるシステム導入を原則義務化、(2)関連する財政措置の拡充(「電子的保健医療情報活用加算」の取扱いは中央社会保険医療協議会で検討)、(3)保険証の原則廃止―なども提案した。
このうち(1)について厚労省は、中医協で検討した上で「保険医療機関及び保険医療養担当規則」を改正するとの見通しを説明。(3)は段階的に進めたい意向を明らかにした。具体的には24年度中を目途に保険者に保険証の発行を義務づける省令の規定を見直し、マイナンバーカードの保険証登録をした被保険者には原則、保険証を発行しないことを保険者が選択できる仕組みを導入。その後は、入院・外来以外で保険証を利用する訪問看護や柔整あはき等におけるオンライン資格確認の導入状況を踏まえながら、保険証の原則廃止を目指すとした。