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楽しむのが薬(青木省三)[プラタナス]

No.5119 (2022年06月04日発行) P.3

青木省三 (慈圭会精神医学研究所所長・川崎医科大学名誉教授)

登録日: 2022-06-04

最終更新日: 2022-06-02

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  • 学校にいく途中で意識を失って倒れるのを繰り返していた、高校1年生の男子。精査をしたが異常なく紹介されてきた。診察室でもしばらくすると意識を失った。父親に「何か頑張りすぎたとかは?」と尋ねてみると、「進学校で帰宅してからも追われるように勉強ばかりしている」と言う。ただ、「この間、ファッション雑誌をニコニコしながら見ていたので驚いた」と付け加えた。

    何回か診察ののち、受診にかかる時間とお金について尋ねてみた。半日近い時間と数千円の医療費・交通費だった。そこで本人と父親に「発作が続くようだったら受診してほしい。でも発作がなく調子がよかったら、同じ時間とお金を、街に出て好きな服に使うというのはどうだろうか」と提案してみた。「病院と街、どっちが健康的でしょうかね」と言うと、父親が「やっぱり街ですかねえ」と答えてくれた。

    それからしだいに受診のキャンセルの電話が増えていった。ある日、父親が一人やってきた。「発作はなくなりました。今はすっかりファッションに目覚め楽しそうに遊んでいる。これでよかったんでしょうか」と言う。「長い目で見たら、しばらくの遊ぶ時間は必要なのではないでしょうか」と言うと、父親はうなずいてくれた。父親の理解が何よりも男子を応援した。

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